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トラのお話し 第 12 話
キツネのトラ退治
インドの昔話 → インドの情報
むかしむかし、ある森の中に、一匹のトラが住んでいました。
トラはお腹が空くと、森の動物たちを捕まえて食べてしまいます。
だから森の動物たちは、いつトラに襲われるかもしれないと思うと、もう心配で心配で、森の中を歩く事が出来ません。
そこで動物たちは相談して、トラにお願いをしました。
「トラさま。実はお願いがあります。トラさまの所に、誰かが毎日食べられに来ますから、わたしたちと森で出会っても、決して襲わないでください」
食べ物を探しに行かなくてもいいので、トラは楽が出来ます。
「よし、わかった。約束しよう。その代わり明日から、毎日一匹ずつ来るんだぞ」
さて、誰が一番最初に食べられるかと、森の動物たちが相談していると、
「ぼくが行こう」
と、頭がかしこいと評判のキツネが手を上げました。
(何とかして、あのトラをやっつけてやる!)
次の朝、キツネは、わざとゆっくり歩いてトラの所へ行きました。
お腹を空かせたトラは、遅れてきたキツネに怒鳴りました。
「何をぐずぐずしていた! わしは、もう腹が減って死にそうだ。早くお前を食わせろ!」
するとキツネは、困った様子で言いました。
「あの、実は、ここへ来る途中に、もう一匹のトラがいて、わたしを食べると言うのです。
そこでわたしは、
『とんでもない。わたしは、これからあなたの仲間へ食べられに行く所です』
と、答えたら、もう一匹のトラは、
『狩りもせずに獲物を食べようとは、生意気なトラだ。わしがやっつけてやるから、ここに連れて来い!』
と、言われたのです」
すると、それを聞いたトラはかんかんに怒って、
「何、このわしをやっつけるだと! いますぐ、そいつのところへ案内しろ! 反対にやっつけてやる!」
と、言いました。
そこでキツネは、トラを深い井戸へ連れて行きました。
「トラさま、そいつは、この中にいます」
「よし、お前はどいていろ」
トラが井戸の中をのぞいてみると、井戸の中にトラの姿がありました。
と言っても、本当は水面に映った自分の姿なのですが。
「お前か! わしをやっつけると言ったトラは! 覚悟しろ、反対にやっつけてやる!」
トラは井戸の中へ飛び込むと、水におぼれて死んでしまいました。
「やれやれ、これで森は平和になった」
トラを退治したキツネは、大喜びで森の動物たちの所へ帰って行きました。
おしまい
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