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牛のお話し 第 3 話
ウシ飼いと裁判官
ボスニアの昔話 → ボスニアの国情報
むかしむかし、ある貧乏な男がお金持の裁判官に、ウシ飼(か)いとしてやとわれました。
ウシ飼いは、やせ細ったウシを一頭持っていました。
そのウシを、いつも主人のウシと一緒に、牧場に連れて行きました。
ある日の事、どうしたことか、主人のウシとウシ飼いのウシが、けんかをはじめました。
そして、やせっぽちで弱いはずのウシ飼いのウシが、主人のウシをツノで突き殺してしまいました。
ウシ飼いは、主人の裁判官のところへかけつけました。
「ああ、おなさけ深いだんなさま。たいヘんな事がおこりました。どうか公平(こうへい)に、おさばきくださいませ」
「よろしい。話してみなさい」
「実はは、今日、牧場でだんなさまのウシが、わたくしめのウシとけんかをしまして、わたくしめのウシを突き殺してしまいました。神さまは罪をおかしたウシに、どんな罰をおくだしになるのでしょうか?」
「まて、まて。はじめから、くわしく調べよう。わしのウシは、おまえのウシをにらんだかね」
「いいえ、だんなさま」
「わしのウシが飛びかかったとき、おまえのウシは、モーと、ないたかね」
「はい、だんなさま」
「では神にちかって、正直に言うのだぞ。おまえのウシが、わしのウシを怒らせたのだろう」
「そんな事はわかりません。だんなさま。モーと言ったのが、どんなわけかなんて、調べられませんよ」
「それでは、どっちが悪かったのか、おまえにはわからないのだな」
「はい、だんなさま」
「どちらが悪かったのか、わからないとすれば、罰(ばつ)する事もできない。動物をさばく事など、できると思うか?」
「そのとおりでございます。だんなさま。まったく、公平におさばきくださいました。ただ、あの・・・」
「なんだ。まだ用があるのか?」
「あの、いま思い出したのでございます。わたくしが、考えちがいをしておりました。わたくしめのウシが、だんなさまのウシを、殺してしまったのでございます」
「なんだと。そうか。では、神がおまえのウシに、どんな罰をおくだしになるか、本で調べよう」
「おや? だんなさま。あなたさまのウシが罰をうけなくてよいのなら、わたくしのウシもうけなくてよろしいでしょう。動物をさばくことなど、できるとお思いですか?」
「そっ、それは・・・。そのとおりだ」
裁判官は、それ以上、もう、何も言えませんでした。
おしまい
※ この「牛飼いと裁判官」の朗読は、以下の方々により、ご提供を受けた作品です。
「牛飼いと裁判官」(ボスニアの昔話)
出演:山口真依
音楽・演出:thin-p@A'sf
企画・制作:A'sf
おはなしパタくんへのリンクURL
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A'sf へのリンク
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