|  |  | 4月3日の日本民話
 
 
  
 真剣勝負
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  むかしむかし、ある剣術の道場で、二人の侍(さむらい)がけんかになりました。「さっきの勝負は、おれの勝ちだ!」
 「いや、おれの勝ちだ。木刀(ぼくとう→木で作った刀)だからわからないだろうが、もし本物の刀なら、いまごろお前は死んでいる」
 「とんでもない。死んでいるのはそっちのほうだ。おれのほうが先に切ったはずだ」
 「うそを言うな。お前なんぞにおれが切れるものか」
 とうとう二人は、大げんかになりました。
 「よし、それなら本物の刀で真剣勝負(しんけんしょうぶ)だ!」
 「おう、望むところだ。きさまのからだをぶった切ってやる!」
 道場にきていたほかの侍が、あわててとめにはいりました。
 「まあ、まあ、二人とも気を静めて。もし道場で刀を抜くと破門(はもん)されるぞ」
 破門というのは、道場をやめさせられることです。
 でも二人は、そんな言葉には耳をかそうとしません。
 「かまうもんか、こいつを切らんとおれの気がすまん。さあ抜け」
 「ようし、覚悟(かくご)はいいな」
 二人は本物の刀を腰にさして、向き合いました。
 そこへ弟子の知らせを聞いて、道場の先生がかけつけてきました。
 「二人とも、やめんか!」
 先生がどなっても、二人はやめようとしません。
 そこで先生は、二人の間に入って言いました。
 「よろしい、それほど真剣勝負がしたいのなら、特別にゆるしてやる。決してとめはしないから、おたがいに死ぬまで戦え。そのかわりどっちが勝っても、勝ったほうをわたしがまっ二つに切ってやるから、その覚悟で勝負せい!」
 二人とも、この先生の言葉にビックリ。
 先生は有名な剣術使いで、自分の相手になるような人ではありません。
 すっかりこわくなった二人は、へなへなと、その場にすわりこんでしまいました。
 おしまい        
 
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