むかしむかし、大阪のある山に、恐ろしい人食い鬼が住んでいました。
「さあ、もうすぐここを人間が通るから、襲いかかって食べるんだよ」
「いやや。人を食べるなんて、いやや」
「でも・・・」
きりりとしたなかなかの美男子で、それに力も強そうです。
鬼の娘は怖いやら恥ずかしいやら、すぐに父親の後ろに隠れました。
「ほら、何をぐずぐずしている。早く食わんか」
鬼の父親は、娘を男の人の前に突き出しました。
「人食い鬼だ!」
びっくりした男の人は、すぐに逃げ出そうとしました。
すると鬼の娘は、手で顔を隠して泣き出したのです。
「いやや。人を食べるなんて、いやや」
もしお前さんが勝ったなら、わたしは喜んで食われてやるよ。
でもお前さんが負けたなら、もう人を食うのをあきらめておくれ。
鬼の娘は腕相撲が大好きで、これまで鬼の仲間に負けた事がありません。
そして男の人と鬼の娘は、さっそく腕相撲をはじめました。
ところが男の人の力はとても強くて、鬼の娘の腕は今にも倒れそうです。
「娘よ、何をやっている。相手は、たかが人間だぞ。しっかりしろ。ほれ、今だ」
でも男の人は強くて、鬼の娘は体ごとひっくり返されてしまいました。
「やん、負けてしもうた」
鬼の父親は娘を起こすと、叱る様に言いました。
「何とも、なさけない。これでは、人を食う事が出来んではないか」
そして持っていたつなの一方を男の人に渡すと、鬼の父親は娘と二人でつなを力一杯引っ張りました。
「それ! 鬼の力を見せてくれよう!」
しかし男の人はとても強くて、
鬼の親子はずるずる引っぱられてしまいます。
鬼の父親の言葉に、どこからか二人の鬼が飛び出して来て、一緒につなを引き始めました。
「それ引け、わっしょい! それ引け、わっしょい!」
ところが四人ともずるずると引っ張られてしまい、男の人の方へと倒れ込んでしまいました。
鬼の父親は、びっくりです。
「こいつは、たまげた!
感心する鬼の父親に、男の人が言いました。
「それでは約束通り、人を食うのをやめてもらうぞ」
「わかった。約束は守ろう」
それから鬼たちは約束を守って、二度と人を襲わなくなったそうです。
おしまい イラストレーターの愛ちん(夢宮愛)さんが、その後のお話しを描いています。 年賀状2013
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