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2月10日の百物語
吹雪と女幽霊
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※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「つれづれ居士」 つれづれ居士
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投稿者 ふわふわスリープ
むかしむかしのある寒い冬の夜ふけ、村はずれにある久左衛門(きゅうざえもん)というお百姓の家の戸を、
トントン、トントン。
と、叩く者がいました。
ふとんにくるまってねむっていた久左衛門は、目を覚まして、
(誰だ? こんな夜ふけに)
と、起きあがると、
「どなたですかな?」
と、戸口へ声をかけました。
すると、戸のむこうから若い女の声が聞こえてきました。
「夜分に、すみません。
実はこの吹雪で、先へ進めなくなりました。
どうか、しばらく休ませてください」
久左衛門は気の毒に思って、戸を少し開けました。
するとその時、
「ご親切に、ありがとうございます」
と、言う声が、背中の方から聞こえてきました。
久左衛門はびっくりして、後ろを振り向きました。
「お前さん。いつ、家の中に入ったんだ?!」
まっ白な着物を着て肩の下まで長い黒髪をたらした若い女は、顔色も白くて雪の精の様です。
「わたしは隣村へ行く途中なのですが、この吹雪では前へ進めません。
風がおさまれば、すぐに出ていきます。
どうかそれまで、ここで休ませてください」
女の人は立ったまま、静かに言いました。
その女の人の顔と声に、久左衛門は一年前に起こった、隣村の大雪の事故を思い出しました。
「あっ、あんた。もしかして、隣村の? おっ、おらは幽霊などに、うらまれる覚えはないぞ!」
久左衛門が怒ったように言うと、女の人は、
「わたしの事を、聞いた事があるようですね」
と、言って、静かに話し出しました。
「わたしは、隣村の弥左衛門(やざえもん)の娘のお安(やす)です。
一人娘なので、年を取った父は三年前、伊三郎(いさぶろう)という婿さんを家に迎えて、わたしと夫婦になりました。
ところが去年の冬、大雪に埋まってわたしが死ぬと、伊三郎は病気の父を捨てて実家へ帰ってしまったのです。
明日は、わたしの命日です。
伊三郎のところへ行って、うらみを言おうと思っているのです」
「・・・・・・」
しばらくすると吹雪がおさまってきたのか、あたりが静かになってきました。
すると、ギギギィーッと戸が開く音がして、気がつくと若い女の姿は消えていました。
夜が明けるのを待って久左衛門はお安の家へ出かけて行くと、何と婿の伊三郎がお安の父親の世話をしているではありませんか。
伊三郎にたずねると、お安の幽霊は久左衛門の家を出たあと、伊三郎の枕元に現れたのでした。
恐ろしくなった伊三郎は、夜明け前にお安の家へ戻って来たというのです。
すっかり心を入れ替えた伊三郎は一生懸命お安の父親の看病をして、その父親が亡くなると頭をまるめてお坊さんになり、全国を巡り歩く旅に出たという事です。
おしまい
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