11月9日の百物語
むかしむかし、伊勢の海辺の村に、みよという娘の海女がいました。 この伊勢の海には、『ともかづき』と呼ばれるお化けがいて、海女たちから恐れられていました。 「いいかい、みよちゃん。 どうしてもそのアワビが欲しい時は背中を向けて、背中にはりつけてもらうんだよ」 「困ったわ。このままでは、ご飯を買うお金がなくなってしまう」 そこでみよは家族が止めるのも聞かずに、しけのおさまりきらない海へと小舟を出したのです。 しかしいくら海に潜っても、アワビもサザエも見つかりません。 「駄目だわ。もっと別の場所に行かない」 「おや、こんな日に潜るなんて、えらい娘さんだね。さあ、このアワビをあげるから、遠慮しないで持っておゆき」 (まあ、なんて親切な海女さんだろう) みよは喜んで、そのアワビを手で受け取りました。 そのとたん、おばあさんはニヤリと笑って、みよの手首を力一杯つかみました。 「ああ、やっと身代わりが来た。これで成仏できるよ」 (あーっ、しまった! ともかづきだ!) みよは必死でもがきましたが、そのまま海の底へと沈んでしまいました。 そして今でもこの海では、死んでともかづきになったみよが、自分の身代わりになる海女が来るのを待っているそうです。 おしまい イラストレーターの夢宮 愛さんが、その後のお話しを描いています。 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 |
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