|
|
福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話 >白ギツネの恩返し
11月13日の日本民話
白ギツネの恩返し
奈良県の民話 → 奈良県情報
・日本語 ・日本語&中国語
むかしむかし、あるところに、五衛門(ごえもん)というお金持ちがいました。
ある朝、五衛門がうじ神(うじがみ→土地の守り神)さまのところへ行こうと野道を歩いていると、一匹の白ギツネが狩人に追われて逃げてきました。
五衛門はその白ギツネを、急いではかまの中へ隠してやりました。
それを見た狩人は、五衛門のそばへ来るとこわい顔で言いました。
「さあ、白ギツネを返してもらおうか。嫌なら、お前さんを撃ってやるぞ!」
狩人は、五衛門に鉄砲をむけました。
「では、この白ギツネをわしが買おう」
五衛門は財布ごと狩人に渡して、白ギツネをゆずってもらいました。
「さあ、もう大丈夫だよ。でももう二度と、こんなところへ来るんじゃないよ」
「コン!」
五衞門の言葉がわかったのか、白ギツネは頭を下げると去っていきました。
それから数日後、あの白ギツネが山のほら穴で寝ていると、外から大勢の話し声がしました。
(いったい、何の騒ぎだろう?)
白ギツネがそっとのぞいてみると、山賊たちが集まって相談をしています。
「いいか、明日の晩、五衛門の家をおそう事にするぞ」
(大変だ! 早く五衞門さんに知らせてやらないと、五衛門さんは山賊に殺されてしまうかも知れない!)
白ギツネは山賊たちがいなくなるのを待って、五衛門の屋敷へ急ぎました。
そして五衛門の屋敷に来ると美しい人間の娘に化けて、五衞門に言いました。
「わたしはこの前、あなたに助けていただいた白ギツネです。実は明日の晩、この屋敷をおそうと山賊たちが相談していたのです」
それを聞いて、五衛門さんはとても喜びました。
「ありがとうよ。よく知らせてくれたね。でも、山賊相手にどうすればいいんだ?」
屋敷にいる男たちを全員集めても、おそろしい山賊たちには勝てないでしょう。
すると娘に化けた白ギツネが、
「大丈夫、わたしにまかせてください」
と、言うなり、外へ飛び出していきました。
娘に化けた白ギツネは、となり町に住んでいる強いと評判の侍のところへ行くと、
「明日の晩、わたしの家に山賊がやってきます。お侍さま、どうか助けてください!」
と、言いました。
侍はこの美しい娘をすっかり気に入り、一緒に五衛門の屋敷に来てくれました。
さて次の晩、侍は屋敷の人たちをみんな近所の家にひなんさせると、丈夫なカギのついた倉の中に大きな火ばちを運び込み、炭火をがんがんおこしました。
それから部屋にもどって、一人で酒を飲み始めました。
するとそこへ、手に刀を持った山賊たちが飛び込んで来ました。
「やい、金を出せ! さからうと、命はないぞ!」
「わかった。金はこっちです」
侍はそう言って、山賊たちを倉へ案内しました。
「ここに金があります。どうぞ、好きなだけ持って行ってください」
それを聞いた山賊たちは、大喜びで倉の中へ入って行きました。
すると侍はそのすきを見て、とうがらしの粉が入った袋を火ばちの中へ投げ込み、倉の外からカギをかけてしまいました。
さあ、それから中は大変な事になりました。
とうがらしの粉が火ばちの火で燃え上がると、その煙が山賊たちの目や鼻をおそったのです。
山賊たちは目を開けられず息も出来ずに、その場にバタバタと倒れました。
「さて、そろそろいいだろう」
侍は五衛門たちをよんで来ると、倒れている山賊たちを一人残らずなわでしばりあげました。
それを見た娘は白ギツネの姿にもどると、うれしそうに山へ帰って行きました。
五衛門は消えていく白ギツネに向かって、手を合わせて言いました。
「ありがとうよ。白ギツネさん」
おしまい
|
|
|