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11月21日の日本民話



どじょうのなべ
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　むかしむかし、やりくりやりべえという、とんちの上手な人がいました。

　ある日の事、やりべえのお母さんがとうふを食べたいと言うので、やりべえはとうふ屋に行ってとうふを一丁買いました。
　その帰り道、たくさんのドジョウをつかまえた若者たちがドジョウをナベに入れて、これからドジョウ汁を作ろうとしているところに出会いました。
　ナベの中をのぞいてみると、うまそうなドジョウがたくさん泳いでいます。
(うまそうなドジョウだな。何とかして、ドジョウを手に入れたいが。・・・そうだ！)
　名案を思いついたやりべえは、若者たちに頼みました。
「すまんが、おっかあに食わせるとうふを、ついでに煮てもいいかな？」
「ああ、煮るぐらい、勝手にすればいい」
「それは、すまん事で」
　おしゃべりに夢中な若者たちは、やりべえの悪だくみに気づきません。
　やりべえがとうふを入れてしばらくすると、ナベのお湯がどんどん熱くなってきました。
　するとドジョウたちは熱いお湯から逃れようと、やりべえの冷たいとうふに次々ともぐり込みました。
(よし、どんどん入れよ。・・・あと、一匹だ)
　やりべえは、ドジョウが一匹残らずとうふにもぐり込んだのを見届けると、
「おおっ、そうじゃ！　急ぎの用を思い出したので、これで失礼する」
と、言って、とうふをひきあげると急いで家に帰っていきました。

　やがて、若者たちはおしゃべりを終えて、
「さあ、もうそろそろ、ドジョウが食べ頃になったはずじゃ」
と、ナベの中をのぞきました。
　するとあれほどいたドジョウが、一匹もいません。
「これは、どうした事だ？」
　ドジョウが消えたので、若者たちは不思議でなりません。
「どうして、ドジョウが消えたのだ？　なべに残っているのは、やりべえの入れたとうふのかけらだけだ。・・・ああっ！　やりべえにしてやられたわ」
　やりべえの悪だくみに気づいた時には、もう後の祭りでした。

おしまい