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6月23日の日本民話 2
ブタを飲み込んだカエル
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むかしむかし、なべやかまを売って歩く商人がいました。
ある日の事、泊まるところのない商人は一軒の百姓家の戸を叩きました。
「すみません。旅の者です。今夜一晩、泊めてください」
「・・・・・・」
家の中に人はいる様ですが、返事がありません。
商人は、もう一度、戸を叩きました。
「すみません。旅の商人です。今夜一晩、泊めてください」
すると戸がガラリと開いて、中から親切そうなお百姓さんが出てきて言いました。
「大したおもてなしは出来んが遠慮なく泊まっていきなされ。その荷物のなべやかまは、土間(どま→家の中の床がなくて地面のままになった所)に置くといい」
次の朝、商人が起きてみると、土間に置いたはずのなべやかまがありません。
商人は慌てて、お百姓さんとおかみさんに尋ねました。
「あの、わたしの大切な商売品のなべやかまを知りませんか?」
「さあ、知らないね。・・・そうそう、ここらには悪いネズミがいて何でも飲み込んでしまうから、そのネズミの仕業かもしれないね」
「ネズミが? そんな馬鹿な。小さなネズミが、大きななべやかまを飲み込めるわけがない」
「そうは言っても、ネズミの仕業としか。ねえお前さん」
「そうそう、ネズミの仕業だろう。わしらは畑に行くから、旅の用意が出来たら出て行ってくれ」
お百姓さんとおかみさんはそう言うと、畑仕事に出かけてしまいました。
実は、このお百姓さんとおかみさんは、家に泊まった人の持ち物を盗んでしまう泥棒で、商人のなべやかまは、この二人が隠してしまったのです。
(あの百姓夫婦め。ネズミがかまやなべを飲み込んだと言うのなら・・・)
商人は、お百姓さんが大切に飼っているブタを小屋から連れ出すと、近くの林の隠しました。
そしてカエルを一匹捕まえると、ひもで足をしばって家の門口に吊しました。
さて、お昼になると、お百姓さんとおかみさんが畑から帰ってきました。
すると商人は竹の棒を振り回しながら、大声でカエルに言いました。
「さあ、吐き出せ! 吐き出さないと、この棒で叩き殺してしまうぞ」
それを見たお百姓さんは、びっくりして言いました。
「一体、何をしているのだ?!」
すると商人は、竹をお百姓さんに渡して言いました。
「わたしが家を出ようとしたら、このカエルがあなたの大切なブタを飲み込んでしまったのです。
だからわたしは、こうやってブタを吐き出させようとしているのです。
さあ、このカエルを叩いてあなたのブタを取り戻しましょう」
「何だって? 家のブタが?」
お百姓さんがあわててブタ小屋に行くと、商人の言った通りブタ小屋は空っぽです。
お百姓さんは商人のところへ戻って来ると、顔をまっ赤にして怒りました。
「こんな小さなカエルが、どうやって自分よりも大きなブタを飲み込めるというのだ!
お前がブタを盗んで、隠したに違いない。
親切に泊めてやったのに、お前はなんて恩知らずなんだ!
さあ、はやくブタを返せ!」
すると商人は、にやりと笑って言いました。
「どうして、カエルがブタを飲み込めないと言い切れるのですか? だってこの家のネズミは、自分よりも大きななべやかまを飲み込むではありませんか?」
「そっ、それは・・・」
お百姓さんは、困ってしまいました。
お百姓さんのブタは、商人から盗んだなべやかまよりも価値があります。
なべやかまを手に入れても、ブタを失ったのでは損をします。
そこでお百姓さんは大きなため息をつくと、商人に頭を下げて言いました。
「わしが悪かった。なべやかまを返すから、わしのブタを返してくれ」
お百姓さんが家の床下から盗んだなべやかまを出したので、商人もブタの居所を教えてあげました。
「ブタは向こうの林の中にいる。別のカエルに飲み込まれないうちに助けてあげなさい」
お百姓さんは、大あわてで林の中へかけていきました。
「やれやれ、これで商売を続けられる」
商人は門口に吊したカエルを逃がしてやると、なべやかまをかついで商売の旅に出かけて行きました。
おしまい
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