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8月4日の日本の昔話

うたうがいこつ

うたうがいこつ

 むかしむかし、びんぼうなある村に、六べえ(ろくべえ)と、九べえ(きゅうべえ)というわかものがいました。
 ともだちどうしのふたりはある日、
「こんな村では、くらしがたたん。町へいってはたらこう」
と、村をあとにしました。
 それから三ねん。
 六べえはせっせとはたらいて、お金のたくわえもできましたが、九べえはあそんでばかりで、いつも一文なしです。
 そんなあるとき、九べえのおかあさんがびょうきだというしらせがありました。
 九べえが、六べえにわけをはなすと、
「おれは村にもどって百姓(ひゃくしょう→詳細)をする。いっしょにかえろう。おまえさんは、おっかさんのみまいにお金がいるだろうから、一両(七万円ほど)をかしてやろう」
 六べえが、さいふから小判をとりだしました。
 さいふにはまだ小判が、いくまいも入っています。
 九べえはそれを見ると、ニヤリとわらいました。
 あくる日、六べえと九べえは、いっしょに村へむかいました。
 そして、とちゅうのとうげにきたときです。
 九べえはいきなり、六べえを刀でさしころして、ふところのお金をうばいとり、なにくわぬかおで村にもどると、
「六ベえは酒ばかりのんでいて、すっかり人がかわってしまった。はずかしくて、村のみんなにあわせる顔がないらしい」
と、六べえのわるくちをいいふらしました。
 九べえは、おかあさんのかんぴょうをしながら、ブラブラとあそんでいましたが、そのうちに、おかあさんは死んでしまうし、お金もなくなって、もとの一文なしです。
 しかたなく、また町へいって、はたらくことにしました。
 九べえがとうげをこえていくと、どこからか、うたごえがきこえてきました。
♪ねがいかなって、めでたやめでた。
♪すえはつるかめ、五葉の松。
♪ほーいほい、ほーいほい。
 だれがうたっているのかと、よくみれば、なんと、木のえだにひっかかったしゃれこうべ(頭がいこつ)が、口をパクパクやっているのです。
「ほう。うたうがいこつとは、めずらしい。町でみせものにして、金もうけをしよう」
 九べえが、しゃれこうべをつかって、町でみせもの小屋のしょうばいをしたところ、すごいにんきです。
 びょうばんをきいた殿さまも、
「しゃれこうべのうたを、ぜひきいてみたい。九べえとやらを、しろによべ」
と、けらいにいいつけました。
 けらいの話をきいて、九べえはニンマリ。
「こいつは、うんがむいてきた。いったい、どんなほうびがもらえることやら」
 九べえは城へいくと、殿さまの前でしゃれこうべをとりだして、
「さあ、いつものうたを、きかせてくれよ」
と、いいましたが、しゃれこうべは口をむすんだきり、うんともすんともいいません。
「これ、どうした。お殿さまのまえだぞ」
 しゃれこうべは、いっこうにうたいません。
 殿さまはおこって、けらいにめいじました。
「その男をしばりあげて、くびをはねい!」
 すると、しゃれこうべが、はじめて口をひらいて、
「殿さま、ありがとうございます。じぶんは、九べえにころされた六べえです。むねんをはらそうと、この日をまっておりました」
と、いってから、ほれぼれするこえでうたいました。
♪ねがいかなって、めでたやめでた
♪すえはつるかめ、五葉の松
♪ほーいほい、ほーいほい

おしまい

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