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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >にほんむかしばなし(日本民间故事) >八月
8月25日の日本の昔話
花嫁になりそこねたネコ
差点成为新娘的猫
翻訳者 廣東省恵州学院 毕嘉欣
にほんご(日语) ・にほんご(日语)&ちゅうごくご(中文)
むかしむかし、あるところに、観音さま(かんのんさま)につかえているネコがいました。
很久很久以前,在一个地方,有一只服侍观音菩萨的猫。
ネコは人間の花嫁(はなよめ)を見るたびに、自分も美しい娘になって人間のところへ嫁入りしたいと思っていました。
每当看到人类的新娘的时候,这只猫都会想变成漂亮的新娘嫁给人类。
そこで観音さまに、
「わたしを、人間の嫁にしてください」
と、頼んだのです。
于是,她拜托观音菩萨,“请让我成为人类的新娘吧。”
「お前はこれまで、わたしによくつかえてくれた。お前なら立派な花嫁になれるでしょう。わたしがいい若者を見つけてやろう」
“到现在为止你都把我服侍得很好,如果是你的话,肯定会成为很好的新娘的吧,我会帮你找一个年轻的好男人的。”
観音さまはネコに約束すると、いつもお参りにくる若者の夢枕(ゆめまくら→夢の中)に立って言いました。
观音菩萨和猫约定好后,就给一直来参拜自己的年轻人托梦道:
「明日の夕方、お堂の前にいる娘を嫁にするがよい」
“你明天傍晚,去观音庙,把在佛堂前站着的姑娘娶来当老婆。”
若者はすぐに、この事を両親に話しました。
年轻人马上把这件事告诉了父母。
すると信心深い(しんじんぶかい→神仏を思う気持ちが強いこと)両親は喜んで、次の日の夕方、若者といっしょに観音堂へ出かけました。
听了之后,很诚心的(指非常相信神佛)年轻人的父母都非常高兴,第二天的傍晚,就和年轻人一起去观音庙了。
観音堂の前には、人間の娘に化けたネコが立っています。
在观音庙的佛堂里,变成人类的猫正站在那儿。
「おい、あの娘ではないか?」
“诶,是那个小姑娘吗?”
「あら、なかなかの器量よしだこと」
“哎呀,长得真不错。”
「あれが、おれの花嫁か」
“那就是我的新娘吗?”
三人は娘のそばへ行きました。
三个人走到小姑娘的旁边,
「娘さん。ここで誰か待っているのかい?」
父親がたずねると、娘が恥ずかしそうに答えます。
「はい、観音さまのお告げで、ここに待っているように言われました」
“小姑娘,你站在这里是要等什么人吗?”
年轻人的父亲问道,接着,那个姑娘有点害羞地回答道:
“是的,观音菩萨和我说过,要让我在这等。”
見れば見るほど美しい娘で、若者はこの娘が気に入りました。
年轻人看那姑娘越看越觉得漂亮,越看越满意。
「そうですか。実はわたしも観音さまのお告げで、ここにいる娘さんを嫁にするようにと言われたのです」
“是这样啊,其实观音菩萨也托梦给我了,让我娶在这里等人的姑娘。”
「えっ、そんな・・・」
“啊,是这样啊...”
娘が、ポッとほおをそめます。
小姑娘脸扑通一下就红了。
「どうだろう。うちの息子の嫁になってもらえないだろうか」
“怎么样,你肯嫁给我家儿子吗?”
父親の言葉に、娘はこっくりうなずきました。
听了父亲的话,小姑娘重重的点了点头。
「よかった。それじゃ、さっそく話をすすめよう」
“太好了,那么,咋们赶紧商量一下婚事吧。”
「では、わたしの両親にも会ってください」
“那样的话,也请见一下我的父母。”
娘は三人を連れて、観音堂の裏手(うらて)へ行きました。
小姑娘领着三人往观音庙后面走去。
そこには古くて立派な屋敷があって、年老いた娘の両親がいました。
那里有一间很旧很大的宅子,小姑娘的上了年纪的父母都在里面。
娘の両親が、若者の父親に頭を下げます。
小姑娘的父母见了年轻人的父亲都低下了头。
「観音さまのお告げで、なんともありがたい事になりました。ですがごらんの通り、我が家は貧乏で、娘には何の仕度もしてあげられません」
“托观音菩萨的神谕,成就了这等美事。但是,就像你们看到的那样,我们家很穷,不能为女儿准备什么。”
「いや、仕度(したく)の方は、いっさいこちらでいたします。こちらはもう、娘さんさえいただければ」
“没关系,我们会准备好所有的东西的,你们只要把闺女嫁给我们就好。”
若者の両親は古い屋敷を見て、むかしは相当な家柄(いえがら)に違いないと思いました。
年轻人的父母看到这间老宅子,都认为这家人以前肯定是大户人家。
若者と両親が帰って行くと、娘の両親はネコの姿にもどって屋敷を出て行きます。
年轻人和父母回去之后,小姑娘的父母就变回猫的样子,离开了宅子。
立派な屋敷といっても、よく見ればただの空き家で、今では野良ネコたちの住まいになっています。
虽说是一间很气派的宅子,但是如果仔细看的话,就会发现那只是一间空房子,现在那里已经成了野猫的住所了。
娘に化けたネコは、すぐに観音さまのところへ報告(ほうこく)に行きました。
「おかげさまで、人間の花嫁になれそうです」
小姑娘变回猫之后马上到观音菩萨那里报告:“托您的福,我快要成为人类的新娘了。”
「それは良かった。これでお前も人の花嫁ですから、決してネコのようなまねをしてはいけませんよ」
“那就太好了,之后,你就要成为人类的新娘了,绝对不可以做出猫的举动来。”
さて、いよいよ婚礼(こんれんい→けっこんしき)の夜がやってきました。
举行婚礼的夜晚终于来了。
若者の家では約束通り、花嫁の着物からカゴまで用意して娘をむかえにきました。
和约好的一样,年轻人那边为迎接新娘,从嫁衣到轿子都为新娘准备好了。
古い屋敷の前には明かりがつけられ、人間に化けた野良ネコたちが忙しそうに働いています。
老宅子前灯火通明,变成人类的野猫都忙着打点婚事
やがて花嫁が出てきて、カゴに乗りました。
不久,新娘出来了,坐上了轿子。
花嫁行列はちょうちんの明かりにかこまれて、しずしずと進んでいきます。
送亲队伍在灯笼的灯光的笼罩下,静悄悄地前进着。
(これでもう、思い残すことはないわ)
“这样就没有遗憾了。”
カゴの中のネコは、心から満足しました。
坐在轿子里的猫这样想着,感到很满足。
花嫁行列が花むこの屋敷につくと、すぐに座敷で祝言(しゅうげん→おいわいのことば)が始まりました。
送亲队伍到了新郎家后,宴席上的宾客纷纷开始祝贺新郎。
花嫁になったネコは花むこのとなりに座って、ウットリとしています。
成为了新娘的猫坐在新郎的隔壁,沉醉在幸福之中。
おごそかな謡(うたい→おいわいの歌)とともに、三三九度の盃(さんさんくどのさかづき→お祝いのぎしきで、三つ組のさかづきで、三度ずつ、三回酒杯をいただくこと)がかわされ、花嫁が盃(さかづき)を口に持っていこうとしたそのときです。
随着庄严的曲子(祝福的歌)响起,新郎新娘行三三九度之礼(在喜庆的仪式上,用三只酒杯各敬酒三次),正当新娘想要把酒杯放到嘴边时。
ふいにおぜんの横へ、ネズミが出てきました。
突然看见一只老鼠从准备好的饭菜旁边走了出来。
そのとたん、花嫁は、
看到的一瞬间,新娘
「ニャオーン!」
“喵——”
と、鳴くなり、ネコの姿になってネズミに飛びついてしまったのです。
的叫了一声,变回猫的样子,飞身扑向老鼠。
「なんだ、あれは!」
“那是什么啊!”
祝いの席に並んでいた人たちは、ビックリです。
坐在宾客席的人都吓了一跳。
花嫁の両親に化けていたネコたちもすっかりあわてて、次々にネコの姿になって座敷を飛び出していきました。
变成新娘父母的猫也慌慌张张地变回猫的样子,从宴席跑了出去。
花嫁に化けていたネコはどうすることも出来ず、ネズミをくわえたまま逃げ出しました。
之前变成新娘的猫也不知道该怎么办了,叼着老鼠就逃跑了。
残された花むこや両親は、すぐに花嫁の屋敷に向かいました。
留在宴席上的新郎和他的父母马上赶去新娘的宅子那。
ところが観音堂の裏手には空き家になったボロ屋敷があるだけで、誰もいません。
可是,观音庙的后面只有一间空了的破烂的房子,一个人也没有。
「ネコを花嫁によこすなんて、なんてひどい観音さまだ!」
“居然让我们娶猫做新娘,这个观音菩萨实在是太过分了!”
両親はカンカンに怒って、二度と観音堂へはお参りに行きませんでした。
年轻人的父母非常生气,再也不去观音庙参拜了。
観音さまは、花嫁になりそこねたネコにあきれて言いました。
观音菩萨对只差一点就能成为新娘的猫感到很惊讶,说道:
「あれほど、よく言い聞かせておいたのに。もう決して、ネコを人間の嫁にはしません」
“我明明都那样告诉过你了,你还...。以后我再也不会让猫做人类的新娘了。”
おしまい
完
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