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    福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話 > さとりのばけもの 
      9月8日の日本の昔話 
          
          
         
  さとりのばけもの 
       むかしむかし、あるところに、一人の木こりがおりました。 
   木こりは山に小屋を立てて、まいにちオノをふるっては、木を切っています。 
   あるとき、木こりが、 
  「きょうのうちに、どうしてもあと一本、たおさねばなんねえ」 
   むちゅうでしごとをしていると、とちゅうで日がくれてきてしまいました。 
  「もうちょっとで、おしまいになるっていうに。・・・まあ、しかたがない」 
   木こりがかれえだをひろいあつめて、たき火をしておりますと。 
   ガサガサ、ガサガサ。 
   クマざさをかきわけて、ひとつ目(→詳細)一本足のおやじさんが、どこからともなくあらわれて、火のそばにやってきました。 
   そして、だまって手をあぶりはじめたのです。 
  (なんだか、おかしなばけもんがでてきたな。やまんじいかもしれん) 
   木こりがそうおもっていると、ひとつ目のばけものがニタリとわらい、 
  「いま、おめえがなにをおもったか、あててみようか。『なんだか、おかしなばけもんがでてきたな。やまんじいかもしれん』そう、おもったろう」 
  と、いいあてました。 
  (おれのおもうことを、みんなさとっている。さとりのばけものかもしれん) 
   木こりがおもうと、ばけものがまた、 
  「いま、『おれのおもうことを、みんなさとっている。さとりのばけものかもしれん』そうおもったろう」 
  と、これまたいいあてました。 
  (こんなばけもんに、かまってはおられん) 
   木こりがにげだそうとすると、 
  「おめえはいま、『こんなばけもんに、かまってはおられん』と、おもったろう」 
   またまた、いいあてました。 
   木こりが、 
  (こんなばけもん、はやくかえればいいが) 
  と、おもっていると、ばけもんは、 
  「いま、『こんなばけもん、はやくかえればいいが』とおもったろう」 
   さらにいいあてました。 
  (これは、よわったことになったわい) 
   木こりが、こまりきっていたときです。 
   たき火の火のこが、パチーンとはじけとんで、ばけものの目にとびこみました。 
   ばけものはとびあがると、 
  「あちちちちっ! 人間て、おもわんことをするもんだ。あぶなくて、こんなところにはおられん」 
   あわてて、山へにげかえっていきました。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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