福娘童話集 > きょうの百物語 > 4月の百物語 > イノシシを退治した、お墓の侍 
         
      4月6日の百物語 
        
         
イノシシを退治した、お墓の侍 
静岡県の民話 → 静岡県情報 
       
      にほんご(日语)  ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文 
      
       
      
        
          | ♪音声配信(html5) | 
         
        
           | 
         
        
          | 朗読者 : 癒しの森🌳朗読ひろりん | 
         
       
      
       むかしむかし、伊豆(いず→静岡県の東部、伊豆半島および東京都伊豆諸島)の小さな村の竹やぶに、生きている時は凄腕と評判だった侍(さむらい)のお墓(はか)がありました。 
         
 このお墓のある竹やぶでは、とてもおいしいタケノコが取れるのですが、食べ頃になるといつもイノシシたちが先にやって来て、タケノコを食い荒らしてしまうのです。 
 お墓を管理しているお寺のお坊さんは、くやしくてたまりません。 
 そこでつい、お坊さんは侍のお墓に向かって文句を言いました。 
「聞くところによると、あんたは何人もの悪人をやっつけて、その勇敢(ゆうかん)な行いで褒美をもらったそうではないか。 
 そんなあんたが、死んでしまったとはいえ、イノシシさえ追い払う事が出来んのか? 
 知っての通り、わしの寺は貧乏寺だ。 
 ここのタケノコを売って、何とか暮らしておるのだ。 
 しかし、このざまではどうにもならん。 
 今度こんな事があったら、備え物のお茶を出してやらんぞ。 
 いいや、この墓を壊してくれようぞ!」 
 
 さて、その言葉をお墓の中の侍が聞いていたのか、次の日の朝、お坊さんが新しいタケノコを探しに竹やぶへ行ってみると、あの侍のお墓の前に、大きなイノシシが何匹も死んでいたのです。 
「まさか、本当にイノシシを退治してくれるとは」 
 お坊さんはびっくりしながらも、お礼に侍のお墓をピカピカに掃除すると、お茶と一緒に饅頭も供えました。 
 
 そして次の年の春からは、不思議な事にイノシシが竹やぶに近づかなくなり、おいしいタケノコがたくさん取れる様になったという事です。 
      おしまい 
         
         
         
        
  |