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11月22日の日本の昔話
キツネとクマ
むかしむかし、キツネがクマに言いました。
「ねえクマさん、いっしょに野菜をつくらないかい?」
「いいなあ。自分で食ベる物をつくれば、毎日山を探さなくてもいいものね」
「じゃあ、クマさんは力が強いから、土をほり返して畑を作ってね。ぼくはタネを見つけて来るから」
「うん、わかった」
キツネはタネを手に入れるために、山をおりて村へ行きました。
クマは一生懸命に土をたがやして、立派な畑を作りました。
そこへ、キツネが持ってきたタネをまきました。
「クマさん、野菜が出来たら半分ずつに分けようね。ぼくは土から下の方をもらうよ」
「だったらぼくは、土から上に出来た方をもらえるんだね」
「そうだよ、クマさん」
やがてタネから芽が出て、緑の葉っぱになりました。
「やあ、もう食ベられるな。クマさん、きみの強いつめでほってよ」
「よしきた」
クマはがんばって、緑の葉っぱを全部ほりおこしました。
出てきた野菜は、大きなかぶでした。
「じゃあ、ぼくは土から下の方をもらうよ」
キツネはそう言って、おいしそうな根っこを全部持って帰りました。
残っているのは、葉っぱだけです。
「かぶの葉っぱなんか、ちっともおいしくないや」
クマはガッカリです。
それからしばらくして、食べ物を探しているクマのところへまたキツネが来ました。
「ねえクマさん、また野菜をつくろうよ」
「うーん、でも・・・」
「大丈夫。今度はきみに、土から下の方をあげるから」
「うん、それならいいよ」
気のいいクマは、また土をたがやしました。
やがてタネが芽を出して、ツルをのばしました。
ツルには大きなカボチャが、ゴロゴロなりました。
「たしか、ぼくが土の上の方をもらうんだったね」
キツネはニヤニヤしながら、カボチャをかかえて帰りました。
「キツネめ、まただましたな」
クマは、プンプンに怒りました。
またある日、キツネがハアハア言いながら走ってきました。
「クマさん、いい知らせだよ。きみの大好きな、ハチの巣を見つけたんだよ」
「本当?! どこなの?」
「こっちさ」
ハチミツが大好きなクマは、よろこんでキツネについていきました。
「ほら、あの木の根元だよ。のぞいてごらん」
「うひゃー! 本当だ。ミツがたくさんあるぞ」
クマは、ハチの巣に手を入れました。
すると怒ったハチが、わっと飛んで来てクマをさしました。
「痛い、痛いよ。キツネくん、助けてー!」
でもキツネは、知らん顔です。
ハチがクマを追いかけているうちに、キツネはハチミツを取って家に帰りました。
また、しばらくたったある日。
キツネがクマの家へ遊びに行くと、クマがおいしそうに肉を食べていました。
「やあ、おいしそうな肉だね。ぼくも、ほしいなあ」
「だったら、村の野原へ行ってごらんよ。ウマが昼寝をしているから」
「でも、ぼくにウマなんか、つかまえられないよ」
「簡単さ。昼寝をしているウマに近づいて、ウマの後ろ足を思いっきりかみついてやるんだ。そしてウマが動けなくなったところを、つかまえるのさ。ねえ、簡単だろ?」
「うん、それならぼくにも出来そうだ」
キツネが野原に行くと、クマの言っていたようにウマが昼寝をしていました。
キツネはそっとウマの後ろに近づくと、昼寝をしているウマの後ろ足にかみつきました。
ガブリ!
するとウマがびっくりして、
「ヒヒヒーン!」
と、後ろ足にかみついているキツネをけり飛ばしたのです。
ヒューン、ドッスーン!
いじわるばかりしていたキツネは、大きな石にぶつかってけがをしました。
それを木のかげから見ていたクマは、笑いながら家に帰っていきました。
おしまい
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