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7月3日の日本民話
逃げ出した相撲取り
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投稿者 「癒しの森っ子」
むかしむかし、あるところに、とても力持ちのおじいさんがいました。
おじいさんは大きなお寺の釣り鐘を一人で持ち上げたり、米だわらを何びょうもかついで歩く事が出来ました。
それに相撲(すもう)がとても強くて、村の若者たちが一度に五人かかっても、たちまち投げ飛ばされてしまいます。
ある日の事、このおじいさんのうわさを聞いて、本物の相撲取りがやって来ました。
相撲取りは、田んぼでウシを使っていたおじいさんにたずねました。
「おい。この村には、相撲の強いじいさんがおるそうじゃが、知っているか?」
「はあ、まだ誰にも負けた事のない、強いじいさんがいますよ」
「何! 誰にも負けた事がないだと?! じいさんのくせして、なまいきだ。わしがひねり潰してやる」
相撲取りは、じまんの太い腕をブンブンと振り回しました。
「ところでじいさん、その強いじいさんの家はどこだ?」
「はい、はい。今教えてあげますから、ちょっと待ってくださいよ」
おじいさんはウシの後ろに付いている、大きな土掘り道具をはずしました。
そしてウシをかつぎあげると、ヒョイと田んぼの外へ出したのです。
「なっ???」
相撲取りは、ビックリです。
それからおじいさんは、一人ではとても持ち上げられない土掘り道具を片手でつかむと、まるで棒切れみたいに振って言いました。
「ほれ、あそこに木が三本見えるでしょ。その横に立っているわら屋根が、じいさんの家です」
それを見て、相撲取りは急に怖くなりました。
「そ、そのじいさん、そんなに相撲が強いのか?」
「さあ? ついこの前は、大イノシシを片手で叩きつぶしたそうですよ。しかし、いくら強いと言っても、本物の相撲取りに相撲で勝てるかどうか」
「・・・片手で、大イノシシを?」
相撲取りは、すっかり弱気になってしまいました。
「で、でも、じいさんは、いや、そのお強いおじいさんは、家にいるかな? せっかく行っても、いないとガッカリするから、また今度来る事にするよ」
するとおじいさんは、ニッコリ笑って、
「大丈夫。そのじいさんなら、ここにいますよ」
と、自分の顔を指さしました。
そのとたん、相撲取りはブルブルと震え出して、
「うひゃーー!」
と、あわてて逃げ出したそうです。
おしまい
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