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4月28日の日本の昔話
力太郎
むかしむかし、あるところに、ふろに入ったことのない、おじいさんとおばあさんがおりました。
ふたりには子どもがありません。
ある日、はじめてふろに入ってアカを落としました。
すると、アカの出ること出ること、あんまりたくさんのアカがたまったので、これであかちゃんの人形を作りました。
するとふしぎなことに、このアカでできた人形が動き出し、人間のあかちゃんになってしまったのです。
「ありがたい、ありがたい。これは、神さまがさずけてくださった子だ」
おじいさんとおばあさんは、このあかちゃんを「力太郎」と名付けて、大切に育てることにしました。
ところが、このあかんぼうは大変な大食らいで、ごはんを食べさせれば食ベた分だけ大きくなり、十五才のころには、名前のように、村一番の力持ちに育ちました。
おじいさんおばあさんは、えらく年をとってしまったので、これ以上はたらいて、力太郎にごはんを食ベさせてやる自信がありません。
どうしたものかと、なやんでいますと、
「おらは旅に出る。百貫目(ひゃくかんめ→約375s)の鉄の棒をつくってくれ」
力太郎がいいだしたので、さっそく百貫の棒をつくってやると、力太郎はそれをブンブンふり回して旅に出ました。
しばらくいくと、大男が石をげんこつでくだいて、人を集めています。
力太郎は、石割り男に力比ベをもうしこみました。
「おらの鉄棒を三回半ふり回せたら、おまえの子分になろう。どうだ?」
「いいだろう。できなければ、おれが子分になってやる」
石割り男は鼻で笑って、鉄の棒を手に取りましたが、一ふり半しか回せません。
そこで石割り男は、力太郎の子分になりました。
ふたりが旅をつづけると、お堂を背負って、いばっている男に出会いました。
「おらの鉄棒を三回半ふり回したら、子分になるぞ」
力太郎がもちかけますと、お堂男は、
「なんのこれしき!」
鉄棒を持ちあげましたが、二ふり半しか回せません。
そこで力太郎は、この男も子分にしました。
しばらくすると、人影のない村で、娘がひとりで泣いています。
力太郎がわけをたずねますと、
「じつはこの村には、まいばん化け物がやってきて、つぎつぎと村人をのんでしまいます。今夜は、わたしが食ベられる番なのです」
と、答えるのです。
「そんな化け物くらい、おらたちがやっつけてやる」
力太郎は力強くいうと、かまいっぱいにめしをたかせ、それをペロリとたいらげて、夜を待ちました。
夜中になると、化け物が現れました。
家よりも大きな、大男です。
「まずは、おれがやってやろう」
はじめに、石割り男が立ち向かいましたが、あっけなくのみこまれ、つぎにとびかかったお堂男も、一口でペロリです。
「よし、最後はおらが相手だ! 百貫目の鉄棒を受けてみろ!」
力太郎が鉄棒をふり回しましたが、自慢の鉄棒は、かんたんにねじまげられてしまいました。
「それじゃあ、これならどうだ!」
力太郎は「えい!」とばかりに、化け物のまたの急所をけりあげました。
さすがの化け物もこれにはたまらず、ひっくり返ってうなりました。
力太郎は化け物の腹の上にとび乗ると、あたりかまわずふみつけます。
とたんに、化け物の口からは、これまで飲んだ人たちが、つぎつぎと飛び出してきたのです。
化け物をやっつけた力太郎は、娘を嫁にもらうと、おじいさんとおばあさんを山奥から呼びよせ、村人たちがお礼にと運んでくるめしをたらふく食べながら、しあわせに暮らしたということです。
おしまい
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