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    福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 8月の日本昔話 > 聞き耳ずきん 
      8月15日の日本の昔話 
          
          
         
  聞き耳ずきん 
       むかしむかし、回りを海に囲まれた南の島のお話です。 
   ある日、くじらに追われた赤いタイが、海のあさい所でバタバタあばれていました。 
  「だれか、助けてくださーい!」 
   タイは泣きながら、何度も何度も大きな声でさけびました。 
  と、ちょうどそこを通りかかった若い男が、かけ寄ってきました。 
   心のやさしい太郎さんです。 
  「おや、きれいなタイだな。かわいそうに」 
   太郎さんはタイを抱きあげて、海の深い所へ放してやりました。 
  「ああ、きょうも一つ、いいことをしたぞ」 
   太郎さんが喜んで帰りかけると、後ろから声をかける者がいます。 
  「もし、もし」 
   だれかと思ってふり向くと、竜宮(りゅうぐう→詳細)からお使いにきたクラゲではありませんか。 
  「太郎さん、わたしは竜宮の竜王さまの使いです。あなたが助けたタイは、竜王の娘なのです。竜王さまはあなたにお礼がしたいと申しております。さあ、わたしといっしょに竜宮へいらしてください」 
   やがて太郎さんは、クラゲの背中に乗せられて、広い海へ出て行きました。 
  「太郎さん、もうすぐ竜宮につきますが、その前に1つ、お話しすることがあります。竜宮さまがあなたにおみやげを渡すといったら、『聞き耳ずきん』がほしいというのですよ。けっして、玉手箱をもらったりしてはいけません。いぜん、玉手箱をもらって、ひどい目にあった人がいますから」 
  「わかりました。『聞き耳ずきん』ですね」 
  「はい、そうです。では、海にもぐりますので、少し目をつぶっていてください」 
   クラゲはそう言うと、海のそこへともぐっていきました。 
   太郎は、ウトウト夢を見ているような気持ちになり、そのまま寝てしまいました。 
   目がさめると、いつのまにか、すばらしい竜宮のお城の前に立っています。 
   竜王さまが門のそばまでむかえにきていました。 
  「太郎さん、さきほどは、わたしのひとり娘のタイ姫をお助け下さいまして、ありがとうございました。さあ、どうぞごゆっくり」 
   竜王にお礼をいわれて、太郎さんは、すっかりうれしくなりました。 
   たちまち太郎さんの前には、ごちそうがいっぱいです。 
   ヒラメやタコやカメ、海の生き物がかわるがわる出てきて、歌や踊りも見せてくれました。 
   でも、太郎さんも、そろそろ家に帰らなくてはなりません。 
   そこで、竜王さまがいいました。 
  「もっとゆっくりしていただきたいのですが。・・・それでは、なにかお礼をいたしましょう。なんでもほしいとおっしゃる物をさしあげます」 
  「はい、わたしは、聞き耳ずきんをいただきたいのです」 
   太郎さんは、クラゲに教えられたとおりにいいました。 
  「・・・聞き耳ずきんですか」 
   竜王さまは、ちょっと困った顔をしました。 
   聞き耳ずきんは、竜宮にたった一つしかない宝物です。 
  「わかりました。聞き耳ずきんをさしあげましょう」 
   太郎さんは、聞き耳ずきんをもらうことができました。 
   クラゲに送られて、太郎さんは、もとの海辺に帰ってきました。 
  「さて、クラゲの話しでは、この聞き耳ずきんを頭にかぶると、鳥でも、草でも、木でも、生きている物のことばがなんでも聞こえてくるといっていたが。・・・よし、あれでためしてみよう」 
   太郎さんは、近くにいたスズメの話を聞いてみました。 
  「チュンチュン、ねえ知っている? すぐそばの川底に、1つだけこけの生えた四角い石があるでしょう。あれは実は、金の固まりなのよ」 
   太郎はすぐに川へ入ると、こけの生えた四角い石をさがしてみました。 
  「おや、この石かな?」 
   太郎が石に生えたこけを取ってみると、中から金のかがやきが見えました。 
   スズメの話は、本当だったのです。 
   うれしくなって、どんどん歩いていくと、今度は二羽のカラスのないしょ話です。 
  「なあ、殿さまのお姫さまが病気なのを知っているか? かわいそうに、もうすぐ死んでしまうそうだよ」 
  「あの、やさしいお姫さまがか? でも、どうして病気になったんだ?」 
  「なんでも、お城を建て直すときに、かやぶきのかやと一緒に、二匹のヘビをしばりつけたそうだよ。お姫さまの病気は、ヘビののろいなのさ。ヘビをたすけてやれば、すぐにお姫さまの病気は治るらしいよ」 
   太郎さんは、すぐにお城へ行きました。 
  「こちらのお姫さまが病気で苦しんでいるそうですが、わたしがなおしてあげましょう」 
   太郎さんは、かやぶきの屋根を指さしていいました。 
  「あそこに、かやとまちがえられて、ヘビが二匹しばられたままになっています。すぐにヘビを助けてください。そうすれば、お姫さまの病気は治ります」 
   家来たちが太郎さんのいうとおりに、かやにしばられているヘビを助けますと、お姫さまの病気はまたたくまに治ってしまいました。 
  「ぜひ、姫のおむこさんになってください」 
   殿さまがいいました。 
   太郎さんは大喜びです。 
   それからのち、太郎さんは心のやさしい島の殿さまになりました。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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