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11月14日の日本の昔話
ウマかたのゆだん
むかしむかし、あるところに、人をだますキツネのすむとうげがありました。
とうげをいったりきたりする、ウシかたやウマかた(→ウシやウマを引いて、荷物を運ぶ人)は、ときどきこのキツネにだまされて、にもつをまるごととられています。
ところが、一人だけ、
「おれは魚をしいれるとき、とうげのキツネのために、安い魚をかってきて、それを食べさせてやっている。だから、にもつをとられるなんてへまはやらん。頭はつかいようだ」
と、じまんしているウマかたがいました。
ある日、この男がとうげにさしかかると、木のかげからよびとめるものがいます。
だれかとおもったら、かみしもをきたキツネです。
「じつは、今晩、せがれがよめをとります。そこで、いつも魚をくださるあなたを、お客としておまねきしたいのですが、いかがでしょう?」
キツネはかしこまって、あいさつしました。
「そんなことを言って、そのすきに、にもつの魚をとろうというのではあるまいな?」
「なにをおっしゃいます。もし、おにもつがしんぱいでしたら、わが家のにわにはこばせましょう。おにもつは、見えるところにおきます。こうすれば、安心でしょう」
キツネはけらいを集めて、ウマのにもつを山の中にはこばせました。
「さあ、こちらです」
キツネはウマかたを屋敷にあんないして、もてなしました。
たくさんのキツネが、いれかわりたちかわり、日ごろのおれいをいっては、酒をつぎにきます。
にもつは目のとどくところにつんであるし、酒もごちそうもうまいし、こんなけっこうなことはありません。
そのうちに、きれいなあねさんギツネが、
「だんなさま、おふろはいががですか。おせなかを、流させていただきたいのですが」
と、いうではありませんか。
「それはありがたい。では、さっそく」
ウマかたがおふろに入ると、ちょうどいいゆかげんです。
すっかりいいきもちになっていると、ウマかたの耳のそばで、わめき声がきこえてきました。
「だれだ! わしの田んぼをかきまわしているやつは!」
「なっ、なに。田んぼ?」
ウマかたがハッと気がつくと、そこは田んぼの中でした。
「しまった! だまされたか」
にもつはなくなっており、ウマだけが、のんびりと草をたべていました。
おしまい
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