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2月26日の世界の昔話
白鳥の王子
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むかしむかし、あるところで、ひとりの女の子が森の中をさんぽしていると、一羽の美しい白鳥がやってきていいました。
「わたしは空の国の王子です。ですが、悪い魔法使いにだまされて、こんな姿にされてしまったのです。おねがいですから、わたしの羽にむすんである糸玉をほどいてください」
「まあ、それはおきのどくに」
女の子が糸玉をほどいてやると、白鳥の王子は喜んでいいました。
「どうもありがとう。お礼に空の国へ連れて行ってあげましょう。わたしといっしょに空のお城でなかよく暮らしましょう。さあ、ほどいた糸玉につかまって」
そういって、白鳥の王子は飛びたちました。
女の子があわてて糸のはしをにぎると、フワリと体がうきあがり、白鳥の王子といっしょに空へ飛び立ちました。
ですが途中で糸がプツンと切れてしまい、女の子は森の中へ落ちてしまいました。
「白鳥さん、待って!」
女の子がさけびましたが、白鳥の王子はそれには気づかず、そのまま空のお城へ飛んでいってしまいました。
ひとりぼっちになった女の子が泣きながら森の中をさまよっていると、ひとりのおばあさんが現われました。
「おや、どうしたんだい? こんな森の中をひとりで」
女の子がわけを話すと、おばあさんがいいました。
「それはかわいそうに。では、この『金の糸くり車』と『ブタのあぶら肉』をあげよう。きっと、いいことがあるよ」
「ありがとう」
女の子はそれをたいせつに持って、また歩きだしました。
しばらく行くと、道のまん中にドラゴンがたおれていました。
なんだか、とても元気のないようすです。
「どうしたの?」
女の子が聞くと、ドラゴンが小さな声で言いました。
「じつは、おなかがすいて動けないのです。おじょうさん、どうか、そのブタのあぶら肉をくれませんか?」
「ええいいわ。そのかわり、わたしを空の国のお城へ連れていってくれるかしら」
「よろこんで」
ドラゴンは女の子からもらったブタのあぶら肉を食べて元気を取りもどすと、女の子を背中に乗せて空にまいあがりました。
こうして女の子は、ぶじに空の国のお城につくことができました。
でも、門の前にはおおぜいの門番が立っていて、女の子がいくらたのんでも、お城の中には入れてくれません。
「こまったわ。どうしましょう」
女の子はしかたなしに、森のおばあさんにもらった金の糸くり車で、糸をつむぎはじめました。
すると、それを見たお城の召し使いが、女の子にいいました。
「おじょうさん。それをくれたら、こっそりお城の中へ入れてあげますよ」
「ほんとうに? はい、どうぞ」
女の子は召し使いに金の糸くり車をやって、やっとお城の中にはいることができました。
さて、女の子が王子の部屋にやってくると、王子はベッドでねむっていました。
「王子さま、わたしよ。起きてください」
女の子は王子を起こそうとしましたが、王子は死んだように眠っていて、ぜんぜん起きようとしません。
するとそこへ、女の子を中に入れてくれた召使いがやってきました。
「これは、ないしょだけど、王子さまは悪い魔法使いにねむり薬を飲まされて、ねむっていらっしゃるのです」
女の子はビックリ。
そこで女の子は、王子さまのまくらもとにあった眠り薬を、目のさめる薬と取りかえると、王子さまのベッドにかくれました。
その日の夜、王子さまの部屋に悪い魔法使いが現れました。
「よしよし、よくねむっているね。このまま何も食べずにもうしばらくねていれば、王子は死んでしまうだろう。そうなれば、やがてわたしが王さまになれるよ」
そして、ねむっている王子さまの口に、ねむり薬をそそぎ込みました。
いえ、そそぎ込んだのは、女の子が取り替えておいた目の覚める薬です。
すると王子さまは、たちまち目をさましました。
そこへベッドの下にかくれていた女の子が飛び出してきて、魔法使いの悪だくみを全て話したのです。
王子さまはすぐにけらいをよぶと、悪い魔法使いをつかまえました。
やがて女の子は王子さまのお嫁さんになり、しあわせにくらすことができました。
おしまい
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