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    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 3月の江戸小話 > かぜのかみおくり 
      3月18日の小話 
        
      かぜのかみおくり 
        むかし、やぶ医者たちが集まって、話しあっておりました。 
  「いや、どうも、このごろは、ひまでひまで、こまったものだ」 
  「こうも、病人がおらんようでは、医者のひものができあがるわい」 
  「名医といわれるお方でさえ、客がないというのだから、われわれごとき、おっと、失礼」 
  「いや、まことに、おたがいさま。借金のことを考えると、頭がいたいわ」 
  と、たがいに、貧乏をなげきあっておりました。 
   ところが、はやりかぜが、町にどっとひろがりました。 
  「やれ、やれ。いのちびろいをしたわい」 
  「借金をへらすのは、このときじゃ」 
  と、医者たちは、おおいにはたらきました。 
   ところが、二、三日たった、ある夜のこと。 
   表の方から、 
  ♪チンカラドンドン 
  ♪ほーいほい 
  ♪チンカラドンドン 
  ♪ほーいほい 
  「いったい、何ごとじゃ」 
  と、医者たちが出て見ますと、これは、おどろいた。 
   町のものおおぜいが、かぜの神のすがたをした人形を、たかだかとかつぎあげ、ちょうちんをともし、かねや太鼓(たいこ)をたたいて、 
  ♪おん出せやーい 
  ♪おん出せやーい 
  ♪かぜの神、おんだせやーい 
  ♪チンカラドンドン 
  ♪ほーいほい 
   それを見た医者たちは、がっかりして、いいました。 
  「ああ、なんという、殺生(せっしょう→むごい)なことをするんじゃ」 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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