| 
      | 
    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 3月の江戸小話 > おいはぎ 
      3月15日の小話 
        
      おいはぎ 
        無敵流指南(むてきりゅうしなん →詳細)という、大きなかんばんをかけた、道場(どうじょう→武術などを習うところ)がありました。 
   ある日のこと、弟子たちが集まって、 
  「このごろ、宿はずれの松原(まつばら)に、夜な夜な、おいはぎ(→詳細)が出るそうな」 
  「ゆうベも、さむらいが身ぐるみ、はがされたそうな」 
  「へえ、さむらいがねえ」 
  「そうよ。おいはぎめ、えらくうでがたつらしい」 
  と、がやがややっているところヘ、この道場のあるじ、無敵流の大先生があらわれました。 
  「なぁーに、いくらうでがたつともうしたところで、たかが、おいはぎ一ぴき。どーれ、今夜はひとつ、拙者(せっしゃ→武士が、自分をふりくだっていう言葉)がまいって、そやつの着物をひっぱいでくれよう」 
   夜になると大先生、うわさの松原ヘでかけることになりました。 
   十人ばかりの弟子をおともにつれて、やってきました大先生。 
  「おまえたちは、ここに待っておれ。拙者ひとりでいってまいる」 
   いきおいこんで出かけていきましたが、しばらくすると、 
   ありゃりゃりゃ。 
   大先生ともあろう人が、身ぐるみはがれて、すっぱだかで、帰ってきたのです。 
  「先生、どっ、どうなさいました!」 
   すると、先生は口に指をあてて、 
  「しーっ、しずかに。おいはぎめに、きこえるではないか」 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
     | 
      | 
     |