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    福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話 > 水グモの糸 
      11月20日の日本民話 
          
          
         
  水グモの糸 
  静岡県の民話 → 静岡県情報 
       むかしむかし、ある山里に、つりの名人がいました。 
   この男の手にかかると、つるのがむずかしいといわれるイワナでもヤマメでも、なんなくつれてしまいます。 
   ある日の事、男が山奥の川につり糸をながしていると、一匹の小さなクモが川からあがってきました。 
   そして男のはいているわらじに糸をかけると、ふたたび川にもどっていきました。 
   そのクモがまた水からあがってきたかとおもうと、男のわらじに糸をかけます。 
   こんな事が何十回もくりかえされるうちに、ほそかった糸もしだいにふとくなって、小さなろうそくのしんくらいになってきました。 
   男は、 
  「おかしなことをするクモもいるもんだ」 
  と、思っていましたが、糸がふとくなるにつれて、なんだかうすきみわるくなってきました。 
   そこでクモが水にもどったすきに、クモのかけた糸をわらじからはずして、すぐわきの大きな木の根にかけておきました。 
   すると、どうでしょう。 
   やがて川の中の何かが、その糸をグイグイひっぱりはじめたのです。 
  「たかがクモの糸ではないか。すぐに、プツンときれてしまうにちがいない」 
   ところが木の根からミシミシッと音がしたかと思うと、ズッ、ズズズッーと、動き出していくではありませんか。 
   とても、あの小さなクモの力とは思えません。 
   しかし糸はますます強くひかれて、最後には大木を根こそぎ倒してしまうと、とうとう川にひきこんでしまったのです。 
  「・・・・・・」 
   男は恐ろしくて、声も出ません。 
   たかがクモの糸とバカにして、わらじにかけられた糸をそのままにしていたら、いまごろは自分が川にひきこまれていたでしょう。 
   そう思った男が川をのぞこうとすると、さきほどまでの小さなクモが、人間よりも大きな姿で川から現われました。 
  「ヒェー! 化け物だー!」 
   恐ろしい化け物グモは、男にシューッと白い糸をふきかけてきました。 
   男はあやうくからだをかわして白い糸からのがれると、あとはいちもくさんに村へ逃げ帰ったという事です。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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