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12月18日の小話
大蛇
むかしむかしの、暑い夏の日の事。
医者が病人を治療(ちりょう)しての帰り道に、暑くてたまらないので大木のかげでひと休みしてすずんでおりますと、木の上から大蛇がおりてきて医者をひとのみにしてしまいました。
大蛇の腹の中へ入った医者は、
「これは困った。何とかして、外へ出たいものだが」
と、考えていましたが、
「そうだ」
ひざをたたくと、いつも持っている薬箱を開け、下剤(げざい)を取り出してパッパッとまきちらしました。
するとたちまち大蛇の腹の中は、ゴロゴロゴローと大きな音がしはじめました。
そしてみるみるはげしい下痢(げり)をおこして、ザーッと医者を外へ吹き出してしまいました。
外へ出た医者は喜んで帰ろうとして、ふと、大切な薬箱がないのに気づき、
「おお、しまった。大蛇の腹の中に忘れてきてしまった。大蛇よ、どうかもう一度わしを飲んではくれまいか」
と、たのむと、大蛇はげっそりとした顔で、
「ええい、もう医者はたくさんじゃ。顔をみるだけで、気分が悪くなる」
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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