福娘童話集 きょうの小話 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
 
     12月31日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
大晦日
きょうの誕生花
ゆず
きょうの誕生日・出来事
1967年 江口洋介 (俳優)
 12月31日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
かさじぞう
きょうの世界昔話
マッチ売りの少女
きょうの日本民話
おさかべひめ
きょうのイソップ童話
イヌとオオカミ
きょうの江戸小話
切腹浪人
12月31日の広告

福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 12月の江戸小話 > 切腹浪人

12月31日の小話

切腹浪人

切腹浪人

 今日は、一年に、たった一度の大みそかです。
 米問屋(こめどんや)の店さきは、人でごったがえしておりました。
 その人ごみを、おしわけて、
「ごめん」
 店の中に、ひとりの浪人(お城ではたらいていない武士で、たいていが貧乏 →詳細)が、かけこんできました。
 ペタリと、土間(どま→家の中で、床を張らずに地面のままの所)にすわると、ものもいわずに、もろはだをぬいで、わきざしを、腹ヘつきたてようとします。
 おどろいたあるじが、かけおりて、
「まあ、まあ。まあ、おまちなさい」
 浪人の手をおさえ、刀をとりあげると、
「これは、いったい、どうしたわけでございます」
 たずねられると、浪人は、ぴたりと両手をついて、頭をひくくさげ、
「それがし、もとは、さる大名(だいみょう→とのさま)に奉公(ほうこう→つとめること)つかまつりし、いささか名のある者なれど、まことに口惜しや、腹ぐろき同輩(どうはい→おなじ地位のなかま)のたくらみにて、主家(しゅか→主人の家)をおわれ、それよりこのかた八年。辛苦(しんく→つらいめにあって苦しむこと)のなかに、なんとか命をつなぎまいったは、ご、ごっ、ご主人さま。ひとえに、ひとえにあなたさまのおかげにございまする」
 浪人は涙を流し、言葉を続けた。
「されば、されば、今日の大みそか。なんといたしても、こちらさまヘの、つもる借金(しゃっきん)。はらいもうさねば、あいすまぬしだいと、朝より八方かけめぐり、苦心(くしん)に苦心いたせども、ああ、悲しや、うらめしや、どうしてもくめんつかず、それゆえ、まことにもうしわけなく、ただ、ただ、いまは、おわびのために、この腹かっきって死のうとの覚悟。なにとぞ、なにとぞ、この場で、死なせてくださりませ」
と、まごころこめての言葉。
 米屋のあるじも、思わず涙をおとし、
「いや、まことに、お見あげもうしたお人がら。さっ、ささ。どうぞ、どうぞ、お手をおあげなされ。そのようなおぼしめしなら、お金のほうは、いつでも、よろしゅうございまする。お金のご心配をなさらず、どうかおくで、ごゆっくり、お酒などを、めしあがっていってくだされ」
 あるじのあたたかい言葉に、
「おこころざしは、かたじけのうございまするが」
と、浪人は立ちあがって、刀をうけとると、
「こんにちは、一年に一どの大みそか。まだ、あちら、こちちに、腹をきりに、まわらねばなりませぬ。・・・ごめん」
 いうと浪人は、とぶように、走りででいったそうな。

おしまい

一覧へ移動   このページを閉じる   ホームへ移動

きょうの江戸小話
ミニカレンダー
<<  12月  >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
福娘のサイト
366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
福娘童話集
世界と日本の童話と昔話
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識