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    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 1月の江戸小話 > 平林 
      1月6日の小話 
        
      平林 
        字のよめない下男(げなん→下働きの男の人)がおりました。 
   ある日、主人に、 
  「すまないが、お医者の平林先生に、手紙を届けておくれ」 
  と、たのまれました。 
   ところが、とちゅうで、なんという名の医者にいくのか、すっかりわすれてしまいました。 
   ちょうど、そばをとおりかかった坊さんに、 
  「もしもし、この手紙のあて名は、なんとよむのでございましょうか?」 
  と、きくと、坊さんは、 
  「ふむふむ、これは、『ひょうりん』ともよむし、『へいりん』ともよむ。また、『たいらばやし』か、あるいは『ひらりん』か、もしかすると、『一八十の木木(いち、はち、じゅう、の、もく、もく)』と、よむかもしれんな」 
   どれもこれも、ちがうようで、どれがどれだかわからなくなった下男は、こまってしまい、大声でよんで歩きました。 
  「ひょうりんか、へいりんか、たいらばやしか、ひらりんか、一八十の木木の医者は、どちらかな」 
   まあ、そのうち見つかるでしょう。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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