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    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 6月の江戸小話 > いれ目 
      6月29日の小話 
        
      いれ目 
        むかし、たいへん上手だと、ひょうばんの眼医者がおりました。 
 ある日、ちりょうにきた病人の目をみて、 
「これは、かんたんな病気じゃ。目玉を取り出し、薬草の煮汁であらえば、すぐになおってしまう」 
と、さじで、両方の目玉をくるりと取り出して、目玉を薬であらうと、えんがわで、かわかしておりました。 
 すると、空からトンビがまいおりてきて、あっというまに、目玉をさらっていってしまいました。 
「これはたいへんじゃ」 
 眼医者はこまって、かわりに、庭でねていた犬の目玉をくりぬき、病人の目にはめこんでしまいました。 
 病人は、たちまち目がよくなり、 
「なにもかも、よくみえるようになりました」 
と、よろこんで帰りました。 
 ところが、二、三日して、この病人が医者のところにやってきて、こういいます。 
「おかげさまで、目はよくみえるようになりました。ですが、おかしなことに、生ゴミがおいしそうにみえますし、客がくると、かみつきたくなって、こまります」 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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