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    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 11月の江戸小話 > 遠めがね 
      11月27日の小話 
        
      遠めがね 
        お殿さまが、生まれて初めて、遠めがね(望遠鏡)をお買い求めになりました。 
   毎日、うれしくてうれしくてたまりません。 
   今日もまた、高台にあがって、あちらこちら、ごらんになっては楽しんでいらっしゃいます。 
  「向こうに見えるあの塔(とう)は、どこの塔じゃ?」 
  「あれは、観音(かんのん)さまの塔でございます。それから、あちらに見えますとりいは、お稲荷(いなり)さんのとりいです」 
   お殿さまは、ご家来が説明するのを、遠めがねをのぞきこんで、一つ、一つうなずきながらきいていらっしゃいました。 
   そのうちに、ふと、ほかの場所に目を移しますと、若い男女が、肩をよせ合って、何やら、楽しそうに、語り合っているのが、お目にとまりました。 
   遠めがねを、じっとのぞきこんで見ていましたお殿さまは、何を話しているのか気になって、思わず遠めがねを耳におあてになりました。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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