| 
      | 
     
        4月15日の日本民話 
        
           
  ナメクジ土俵 
  愛媛県の民話 → 愛媛県情報 
       むかしむかし、ある村では日照り(ひでり→長い間、雨がふらない事)がつづいて、田畑の作物がほとんど枯れてしまいました。 
   食べる物が少なくなり、働く気力もなくなったお百姓(ひゃくしょう)さんたちは、すっかりふさぎこんでいました。 
   この村では毎年四月にすもう大会がひらかれていましたが、土俵(どひょう)をつくる元気もないのか、だれもすもう大会のことを口にする者はいません。 
   このままでは、すもう大会は中止になるでしょう。 
   ところが、ある朝の事です。 
   畑仕事にいこうとしたお百姓が、お地蔵(じぞう)さんの前の原っぱで、キラキラ光っているものを見つけたのです。 
  「はて。なんだろう?」 
   お百姓が原っぱまで行ってみると、大きな土俵(どひょう)のまわりの縁のところが、日の光にあたって丸くと光っていたのです。 
  「だれかが、こんなりっぱな土俵をつくってくれたぞ」 
   お百姓は喜んで、ふと土俵のかたわらの草のかげに目をやると、そこには何百匹もの死んだナメクジがころがっていました。 
   お百姓はビックリして、村の人たちのところへ飛んでいきました。 
  「そういえば、きのうの晩おそくにあそこを通ったんだ。その時、何かがボーッと光っていた。月の光が草の夜露(よつゆ)にあたっているんだろうと思って、べつに気にもかけなんだが、その時に、このナメクジたちがはいずりまわって、からだのネバネバで土俵をつくっておったんだな」 
  「これは、祭りにすもう大会をしろという事じゃないか。きっと神さまがナメクジたちに命じて、この土俵をつくらせたんじゃ」 
  「うむ、そうかもしれん」 
   ナメクジは自分たちが死ぬほどの力を出して、たった一晩で見事な土俵をつくったのです。 
   祭りの日、元気を取り戻したお百姓さんたちは、すもう大会をおおいに楽しみました。 
   そして自分たちに元気をあたえてくれた土俵に、『ナメクジ土俵』という名前をつけたという事です。 
      おしまい 
                  
 
  | 
      | 
     |