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        4月26日の日本民話 
          
          
         
テングと旅をした男 
滋賀県の民話 → 滋賀県情報 
       むかしむかし、比叡山(ひえいざん)にあるお寺の修理(しゅうり)に立ちあっていた、木内兵左衛門(きのうちひょうざえもん)という若い侍(さむらい)が、とつぜん行方不明になりました。 
   兵左衛門(ひょうざえもん)はお酒が好きで、遊びも好きだったので、かってに山をおりて町にでもいったのだろうと、だれもが思っていました。 
   ところが、兵左衛門がはいていたぞうりが、お寺の玄関先(げんかんさき)と内庭(うちにわ)に片方ずつ落ちていたのです。 
   もっとさがしてみると、へし曲げられた刀とひきさかれた帯が見つかったので、たいへんなさわぎになりました。 
  「兵左衛門は玄関からでようとして、だれかにひきずられて内庭をぬけ、山の中へつれていかれたのだろう」 
  「刀を曲げるなんて人間ではない。まさか、テングにさらわれたのではあるまいな」 
   もう日は暮れて、あたりはまっ暗です。 
   工事の仲間も一緒に火をたいて、兵左衛門の事を心配していると、大工(だいく)の若者が、 
  「人の声がするぞ」 
  と、いって、暗やみの中へ走っていきました。 
   するとお堂の屋根の上で、羽のあるあやしい者が立っていて、下へおろしてくれというのでした。 
   よく見るとそれは、行方不明になっていた兵左衛門で、羽に見えたのはやぶれた雨傘(あまがさ)でした。 
   はしごをかけて屋根からおろされた兵左衛門は、とてもつかれたような荒い息をしています。 
   兵左衛門の話によると、夕方に名前を呼ばれたので玄関まで出ていくと、黒い衣を着た若いお坊さんが立っていたというのです。 
   お坊さんは顔が赤く、みだれた長い髪の毛を地面までたらしていました。 
   そして、 
  「ちょっと、そこまできてくれぬか」 
  と、いうなり、兵左衛門の手を強い力でつかみ、内庭のほうへひっぱって行ったのです。 
   兵左衛門は刀に手をかけましたが、すぐにうばいとられて曲げられてしまいました。 
   それからあばれる兵左衛門をかつぎあげると、お堂の屋根の上へほうりあげたというのです。 
   屋根の上には、赤い衣を着た鼻の高い大きなテングがいて、 
  「いいところへ、つれていってやる」 
  と、足の下にある丸いお盆のようなものにのるようにいいました。 
   兵左衛門が足をかけると、そのお盆はふわりと宙にうかびあがり、兵左衛門はテングと一緒に山をこえ、海をこえて、テングの仲間たちがすむ山々をめぐりました。 
   そしてたったいま、お堂の屋根の上にもどってきたというのでした。 
  「のどがからからじゃ。酒がのみたい」 
  と、兵左衛門がいうので、宿へもどってお酒をやると、どんぶりで五杯もたてつづけにのみほし、宿がゆれるほどの大いびきをかいて四日間もねむりつづけたという事です。 
      おしまい 
                  
 
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