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6月28日の世界の昔話
カイコになったお姫さま
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むかしむかし、ある国の王さまが家来たちと狩りをしていると、突然、大勢の盗賊が襲ってきました。
家来たちはゆうかんに戦いましたが、大勢の盗賊にはかないません。
とうとう王さまは盗賊にさらわれてしまい、お城にはおきさきさまと一人のお姫さまが残されました。
おきさきさまもお姫さまも家来たちも、何とかして王さまを取り戻そうと考えましたが、どうする事も出来ませんでした。
こうして、一年が過ぎました。
王さまが大好きだったお姫さまは心配で食事もろくにのどを通らず、どんどんやせていきました。
「このままでは、姫が死んでしまうわ」
見かねたおきさきさまは、国中にこんなおふれを出しました。
《王さまを取り戻してきた者に、姫をお嫁にあげます》
さて、おふれが出てから三日後、一頭の白い馬が王さまを背中に乗せてお城に駆け込んで来ました。
「あなた!」
「お父さま!」
「王さま!」
おきさきさまも、お姫さまも、家来たちも、大喜びです。
白い馬はさっそく大きな馬小屋に入れられて、たくさんのごちそうをもらうと大事に大事にされました。
この白い馬、普段はとても大人しいのですが、お姫さまが側を通ると足をパカパカ動かして暴れるのです。
王さまは不思議に思って、おきさきさまにそのわけを尋ねました。
そしておきさきさまからおふれの事を聞いた王さまは、びっくりして言いました。
「まさか馬が、姫をお嫁にしたいというのではないだろうな」
「そんな事は。・・・でも馬は、とても利口な動物だといいますから」
「うむ・・・」
王さまは心配になって、馬小屋へ行って馬に尋ねました。
「お前は、もしかして姫を、お嫁にする気でいるのかい?」
すると馬は、
ヒヒーン!
と、とてもうれしそうにいななきました。
「何と! 馬のくせに、とんでもない奴だ!」
すっかり怒った王さまは家来に弓矢を持ってこさせると、馬をめがけて矢を放ちました。
馬は悲しそうに王さまを見つめると、そのまま地面に倒れて死んでしまいましたが、王さまは馬を殺しただけでは気がすまず、馬の皮をはぐと、お城の庭の木から馬の皮をぶらさげました。
さて、その事を知ったお姫さまは、殺された馬が可愛そうでなりません。
「ひどいお父さま。何も殺さなくてもいいのに」
そこで庭に誰もいなくなると、お姫さまは馬にあやまろうと思って、そっと一人で木のそばに行きました。
「お馬さん、ごめんなさい。お父さまを助けてくれたのに、こんな事になってしまって」
その時です。
突然強い風が吹いて来て、木の枝にかかっていた白い馬の皮が空に舞い上がりました。
空高く舞い上がった馬の皮はヒラヒラと降りてくると、びっくりして立っているお姫さまをすっぽりと包み込んでしまいました。
そしてお姫さまを包み込んだまま、また空高く舞い上がってしまいました。
しばらくして王さまやおきさきさまは、お姫さまがいない事に気がつきました。
「姫は、どこへ行った?!」
お城中が、大騒ぎとなりました。
みんなで探して探して、とうとう一人の家来が庭のはずれのくわの木に、白い馬の皮が小さくなってくっついているのを見つけました。
よく見ると馬の皮はまゆ玉になり、その中でお姫さまはカイコになっていたのです。
こうして心のやさしいお姫さまは、世の中で最初のカイコになったのでした。
おしまい
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