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    福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話 > おスマばあさん 
      11月29日の日本の昔話 
          
          
         
  おスマばあさん 
       むかしむかし、ある山おくの村に、おスマさんという、ばあさんがいました。 
   はやくに死んだじいさんのお墓をたてようと、二十年間、ほしい物もガマンして、やっとためたお金を、旅の男にだまされて、きれいに持っていかれてしまいました。 
   それ以来、村の者はおスマばあさんのことをバカにしていました。 
   ある日のこと。 
   おスマばあさんのところヘ、役人が二人づれでやってきました。 
  「この村では、酒をつくっておるじゃろう」 
  「どこの家とどこの家じゃ。ばあさん、知らんかね」 
  と、聞いてきました。 
   この村は貧乏なので、税金の高いお酒を買うことができず、役人にはないしょで、自分たちでどぶろく(にごり酒)をつくっていました。 
   役人に聞かれたばあさんは、ゆっくり腰をのばして、 
  「へえ、旦那(だんな)。ささでこぜえますかい?」 
   役人たちは、うなずきました。 
   酒のことは、「さけ」の「さ」を重ねた言葉の「ささ」ともいいます。 
  「それでしたら、この村じゃあ、山の炭焼小屋で、どっさり、つくっておりますだ」 
   それを聞いた役人たちは、 
  (ウッヒヒヒ。きょうは、たっぷり飲めるわい。ろうやに放り込むとおどかせば、金も手に入る。・・・これだから、役人はやめられん) 
  と、顔を見あわせて、ニヤリとわらいました。 
  「わるいが、ばあさん」 
  「そこヘ、案内してくれんか」 
  「ちょっと待ってくだっせ。むすこがもどってくるまでに、おらあ、飯をたいといてやらにゃならんで、ちょっくらとなりまでいって、米かりてくるでな」 
   出かけていったばあさんは、帰ってくると、 
  「さあ、案内しますで」 
   おスマばあさんは役人をつれて、山道をスタコラサッサとのぼっていきました。 
   ばあさんのあとから、役人たちはフウフウいいながらついてきます。 
  「このばばあ、年はとっても」 
  「ばかに足は早いわい」 
  と、ブツブツいいながらも、いっしょうけんめいついてきます。 
   やっとのことで、山おくの、ふるい炭焼小屋が見えてきました。 
   ばあさんは、小屋のほうを指さして、 
  「旦那。ささは、あそこでつくっておりますだ」 
   いわれると、役人たちはかけだしました。 
   小屋の戸をあけると、まるで、ころがるように中ヘとびこみます。 
   ところが、そこはクモの巣だらけで、どこをさがしても、酒のさの字もありません。 
   役人たちは、腹たてて、 
  「ばば、ばばあ!」 
  「酒は、どこだっ!」 
   すると外から、おスマばあさんが手まねきして、 
  「ヘえ、こっちでさあ。旦那、はようきてくだせえ。すぐそこにささは、どっさりございますよ」 
   役人たちが小屋を出て見ると、おスマばあさんが、でっかい笹(ささ)やぶをゆびさして、 
  「いい笹じゃろ」 
  と、いいました。 
   そのころ村では、おマスばあさんの知らせを聞いた村人が、どぶろくの入った酒つぼをかくしたあとでした。 
   このことがあってから、村の者はだれも、おスマばあさんをバカにしなくなったということです。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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