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    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 8月の江戸小話 > 大食らいの三太郎 
      8月30日の小話 
        
      大食らいの三太郎 
        若い者が六、七人、それぞれ食いものを持ちよって、ごちそう大会をすることになりました。 
   ところが、大食らいの三太郎(さんたろう)ときたら、小さなにんじん一本もってきたっきりで、どっかと大なベの前にすわりこみ、さかんに、はしをつっこんでいます。 
   ほかの友だち連中は、どうもおもしろくありません。 
  「よう、三太郎」 
  「なんだい」 
  「このごろはな、夜になると、おいはぎ(ごうとう)が出るそうだ。ぶっそうだから、おまえはもう帰れ」 
  と、親切(しんせつ)をよそおって、いうと、 
  「そうか。そんなら帰ろう」 
   三太郎は、あっさりと帰りました。 
  「やれ、やれ、これで安心だ」 
  「あの大食らいが、いなくなったから、たんまり食えるぞ」 
  と、友だち連中が、さかんに食っておりますと、ガラッと、戸が開いて、三太郎がもどってきました。 
   おどろいたことに、三太郎はすっぱだかです。 
  「おまえ。もう、おいはぎに、やられたのか?」 
  と、きけば、三太郎おちついて、 
  「ちがう、ちがう。おいはぎにあっても大丈夫なように、家に着物をぬいできた。さあ、食うぞ」 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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