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    福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 8月の江戸小話 > 番町皿屋敷 
      8月13日の小話 
        
      番町皿屋敷 
        ここは、あの有名な、番町(ばんちょう)、青山播磨(あおやまはりま)の古屋敷(ふるやしき)。 
   古井戸(ふるいど→詳細)から、きれいなお菊(きく)のゆうれい(→詳細)があらわれるというので、たいへんなひょうばん。 
   ゆうれいを見たいと、まい晩、まい晩、おすなおすなのにぎわい。 
   人が集まるのにびんじょうして、夜泣きそばから、だんご屋、おでん屋までが、店をだすというしまつ。 
   さて、ある晩のこと。 
   見物人(けんぶつにん)は、いまかいまかと、ゆうれいをまっておった。 
   すると、草木もねむるうしみつ時。 
   青い火が、メラメラメラと、もえたかと思うと、井戸の中から、スーーッと、お菊のゆうれいがあらわれた。 
  「いよう、お菊さーん」 
  「まってました。」 
  「しっ。しずかに、しずかに、しずかに・・・」 
   みな、耳をそばだてて、お菊の声をまっておる。 
  「・・・一まい、・・・二まい、・・・三まい」 
   いつものように、ゆうれいが、細いふるえ声でかぞえはじめた。 
   みんなは、ガタガタとふるえながらも、お菊の声に、ききほれておると、いつもは九まいでとまるはずが、 
  「・・・十まい、・・・十一まい、・・・十二まい」 
  と、つづけて、やがて、 
  「・・・十八まい。」 
   そこまでかぞえて、スーッと、井戸へ消えようとします。 
  「おっと、お菊さん。まった。」 
  「今晩は、かずがおおございますな。」 
  「おまけですかい。」 
   するとゆうれいは、さびしくわらって、 
  「はい。実はかぜぎみでございますので、明日は、おやすみです。」 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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