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10月23日の世界の昔話

ロバの王子

ロバの王子
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 むかしむかし、あるところに、王さまとお妃(きさき)とがすんでいました。
 二人はお金持ちだったので、なんでもほしいものはもっていましたが、ただひとつ、子どもというものがありません。
 そのことをお妃はなげいて、
「わたしは、なにもはえない畑みたいなものだわ」
と、口ぐせのようにいうのです。
 だけど、神さまがお妃の願いをかなえてくださる日がやってきました。
 ところがいよいよ子どもが生まれてみると、それは人間の子どもではなくて、ロバの子だったのです。
 お妃はこんどこそは、ほんとうになげきかなしんで、
「ロバの子が生まれるくらいなら、いっそ子どもなんかないほうがまし。この子は川ヘなげこんで、魚に食ベさせてしまってください」
と、いったのです。
 でも王さまは、いいました。
「いや、そんなことはいけない。神さまがおさずけになったのだから、これでもやっぱりわしの世つぎの息子じゃ。わしが死んだあとは、とうぜん玉座(ぎょくざ)について、王さまのかんむりをいただくベきものじゃ」
 こうしてロバの王子はそだてられることになり、やがて大きくなりました。
 このロバの王子はとっても明るい子で、いつもそこらじゅうをはねまわっています。
 また、音楽が大すきで、あるとき有名な楽師(がくし)のところへいくと、
「わたしをあなたの弟子にして、あなたみたいにリュートがうまくひけるようにおしえてください」
と、いいました。
「ざんねんながら、若さま、それはむつかしいことでございましょう。あなたのお指は、とうていリュートをひくようにはできていません。大きすぎます、とても絃(げん)がもちますまい」
 こういって楽師はこたえましたが、ロバの王子は、どうしてもリュートがならいたいというのです。
 こうしてリュートをならうことになった王子は、それはそれはいっしょうけんめいに練習して、しまいには先生とおなじくらいうまくひけるようになりました。
 さてあるとき、わかい王子がなにか考えこみながらブラブラ歩いていますと、いつのまにか泉(いずみ)のそばにきていました。
 そこで泉のなかをのぞきこむと、カガミのようにすんだ水に、ロバのすがたをしたじぶんのすがたがうつっているのでした。
 それを見ると、王子はすっかりなさけなくなって、おともをただ一人つれて旅にでてしまいました。
 二人はあちこちさまよいまわったあげく、やがて年とった王さまのおさめる国ヘきました。
 その王さまには、ビックリするほど美しいお姫さまがいます。
「ぼくらは、ここに足をとめることにしよう」
 ロバの王子は正門をたたいて、大きな声でよびました。
「お客さまのおつきだぞ。門をあけておとおしもうせ!」
 でも、門はあきませんでした。
 すると王子は、そこヘこしをおろしてリュートをとりだすと、二本の前足で、それはみごとにかきならしました。
 ビックリした門番は、王さまのところヘ走っていきました。
「門のまえにロバの子がおりまして、リュートをそれはみごとに、まるで名人のようにひいております」
「そうか、それならばその楽人をここヘとおせ」
と、王さまはいいました。
 ところが、入ってきたのはロバの子ですから、みんなはこのリュートひきをわらいものにしました。
 それでロバは、きたない下男の部屋ヘつれていかれて、そこで食事をすることになりました。
 するとロバは、きげんをわるくしていいました。
「ぼくは世間なみのいやしいロバではない。高貴の生まれなのだぞ」
 そうするとみんなは、
「そんならおまえは、兵隊のなかまになりな」
と、いいました。
「いや、ぼくは王さまのおそばにすわるんだ」
 こうロバがいうと、王さまは笑いながら、
「そうか。ではおまえののぞみどおりにしてやろう。ロバや、わしのそばヘおいで」
と、上機嫌にいいました。
 そして聞きました。
「ロバや、わしの娘をどう思うな」
 ロバはお姫さまをジッと見つめると、こっくりとうなずきました。
「これほど美しいかたには、まだおめにかかったことがございません」
「そうか、では姫のそばヘすわるがよい」
「はい。それこそ、わたしにふさわしいことでございます」
 ロバはこういって、お姫さまのそばにすわって食ベたりのんだりしましたが、そのふるまいはいかにも上品なので、王さまはとても気に入りました。
 こうしてロバは、かなり長いあいだ王さまのご殿にとどまっていましたが、やがて、
(こんなことをしていてもなんにもならない。そろそろ、うちヘかえらなくては)
と、考えました。
 そして、かなしそうに頭をたれて王さまのまえヘでると、おひまをいただきたいとおねがいしたのです。
 けれども王さまは、このロバがすっかりすきになっていました。
「ロバや、いったいどうしたのだ。わしのそばにいるがよいぞ。おまえののぞみのものはなんでもあげよう。金貨がほしいのか?」
「いいえ」
 ロバは首をふりました。
「では、りっぱな道具やかざりがほしいのか?」
「いいえ」
「わしの国でも半分ほしいのか?」
「いいえ、とんでもないこと」
「そうか。おまえを満足させるものが、なにかあるといいのだがな。・・・そうだ、わしのきれいな娘を、よめにもらいたくはないか?」
 すると、
「はい、お姫さまをいただきとうぞんじます!」
 それこそロバが、まえまえからのぞんでいたことでした。
 こうして、それはすばらしい結婚式があげられました。
 やがて夜になると、花よめと花むこは寝室へ案内されていきました。
 ロバのすることが、今夜もちゃんと礼儀にかなっているかどうか知りたいと思った王さまは、一人の家来に、寝室にかくれているようにいいつけました。
 さて、二人が寝室に入りますと、花むこは戸口にかんぬきをさしてから、あたりを見まわしていましたが、花よめとただ二人だけだと思うと、いきなりロバの皮をぬぎすてました。
 するとそこに立っているのは、いかにも美しくて上品な一人の若者でした。
「ぼくがどういう人間だかわかりましたね。これならあなたにだって、そうつりあわないこともないでしょう」
 それを見ると、花よめは大よろこびで、おむこさんにキスをしました。
 しかし、つぎの朝になると、おむこさんはとびおきるなり、またロバの皮をきてしまいます。
 やがて、年とった王さまがやってきました。
「おまえはちゃんとした人間を夫にもたないで、さぞ、かなしくているのだろうね」
 するとお姫さまは、首を横にふって、
「どういたしまして、おとうさま。わたし、あの人を世界一美しい人のように愛していますわ。そうして、一生つれそおうと思っていますのよ」
 王さまはこれをきいて、ふしぎに思いましたが、そこヘかくれていた家来がでてきて、見たことをすっかり話しました。
「そんなことが、あるのだろうか」
「それならば、今夜はごじぶんで見はっていてごらんなさいまし。きっとその目でごらんになりますでしょう。ところで王さま、あの毛皮をとりあげて火にくベてしまったら、あのかたはほんとうのすがたになるのではございませんか」
「なるほど、うまい考えじゃ」
 王さまは夜になって若夫婦がやすむと、こっそりと寝室ヘしのびこみました。
 寝台に近づいてみると、月の光をあびて、いかにもりっぱな若者がやすんでいて、ぬいだ毛皮が床の上においてあるではありませんか。
 王さまはそれをとると、火の中になげこんで、すっかり灰にしてしまいました。
 朝になり、王子は毛皮をさがしましたが、どこにも毛皮がありません。
 王子はおどろいて、いかにも心配そうにしょんぼりしていいました。
「いよいよ、ぼくはここをにげださなくちゃならないのだな」
 こうして王子がそとヘでると、そこには王さまが立っていて、おっしゃるのでした。
「息子や、そんなにいそいでどこヘいくのだ。なにを考えているのだ? ここにおいで。おまえはほんとうにりっぱな人間だ。わしをすてていってはいけないよ。わしはこれからおまえに国の半分をやろう。そして、わしが死んだら全部をうけつぐのだ」
 そこで年とった王さまは、王子に国の半分をやりました。
 それから一年すると、王さまがなくなりましたので、王子は国のぜんぶをおさめました。
 やがてじぶんの国の王さまもなくなって、二つの国を治める王さまになったということです。

おしまい

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