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    福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話 > たすけとお化け 
      10月8日の日本の昔話 
          
          
         
  たすけとお化け 
       むかしむかし、あるところに、古ぼけたお寺がありました。 
   このお寺には、秋風がふくとともに、ばけものがあらわれるというので、村人たちはたいそうこわがって、昼間から家にとじこもったままです。 
   これではいかんと、みんなは集まって相談しました。 
  「ほんとうにこまったのう。だれぞ、寺にいってばけものをたいじしてくれるものはおらんかのう」 
   ちょうどそのころ、富山(とやま)から薬売りがやってきました。 
   太助(たすけ)という、かしこそうな若者です。 
  「・・・? おかしいなあ、だれもおらん。この村は、いったいどうしたんじゃあ?」 
   太助は一軒の家の戸を開けてみました。 
  「こんちは。薬はいらんかね」 
  「薬どころではねえだ」 
   太助は、村人たちがばけもののために畑仕事にも出られず、こまっていることを聞きました。 
   そこで太助は、胸をドン! とたたいて、こういいました。 
  「わたしは、毎年みなさんに薬を買ってもらっております。そのお礼をさせてくだせえ。ここはわたしにまかせて。わたしがばけものをたいじしますで」 
   夜になるのを待って、太助はお寺へ出かけていきました。 
   秋の夜はしずかにふけて、物音ひとつしません。 
   太助が大きなあくびをして、コックリコックリと、いねむりをはじめたときです。 
   白いフワッとしたものが、太助の目の前にあらわれました。 
  「この寺にひとりであらわれるとは、見上げたどきょうじゃ。おまえはわしがこわくはないのか?」 
  「ああ、こわくなんかないわい」 
   ばけものは、すこしもこわがらない太助に、 
  「ははは、おもしろい小僧じゃ。この世にこわいもんはなにもないのか?」 
  「ああ、なにもないわい!」 
  と、いいながらも、太助の顔には、ひや汗がタラタラと流れています。 
  「ほれ、見い。やっぱりこわいんじゃろう。それでいいのじゃ。おばけであるわしだって、こわいものがたった一つあるのじゃからな」 
  「なに? おばけのおまえがか?」 
  「ああ、あるぞ。おまえがいちばんこわいものをいったら、おしえてやろう」 
   太助は少し考えると、 
  「わしがこわいのは、お金じゃあ。で、おまえのこわいものはなんじゃ?」 
  「わしか。わしはナス汁(じる)じゃあ」 
  「ナス汁がこわいなんて、おかしなおばけじゃなあ」 
   つぎのばん、太助はお寺のいろりに大きななべをかけて、集めたナスを山ほどにこみながら、おばけのあらわれるのを待ちました。 
   ゆうべと同じころ、おばけは大きなふくろをかついでやってきました。 
  「小僧、おまえのこわいお金をやるぞ」 
  「こ、小判だ! こわい、こわいよ〜!」 
   太助がにげだすと、おばけは小判をなげつけます。 
   たちまち部屋じゅうが小判でいっぱいになりました。 
  と、こんどは太助がおばけにナス汁をふりかけました。 
  「それ、おまえのこわいナス汁じゃ。そうれ、ナス汁じゃ。こわいぞう!」 
  「ひい〜っ!」 
   おばけは悲鳴をあげながら、庭の中をにげまわり、やがて大きな木にしがみつきました。 
   太助はここぞとばかり、おばけにナス汁をなべごとあびせかけます。 
   すると、おばけは大きなキノコにかわってしまい、小判は小さなキノコにかわりました。 
   こうして、おばけをたいじした太助は、村人たちからたいへんかんしゃされ、薬もずいぶんと買ってもらい、またつぎの村へとむかいました。 
   あの大きな木についたままのキノコは、寺のたからものになりました。 
   それからだそうです。 
   キノコ汁にナスを入れると、中毒にならないといわれるようになったのは。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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