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 水晶のオンドリ
 イタリアの昔話 → イタリアの国情報
  むかしむかし、あちらこちら旅をしている、一わのオンドリがいました。すきとおるような、まっ白の羽をしているので、水晶(すいしょう)のオンドリとよばれています。
 ある日、水晶のオンドリは道ばたに一通の手紙がおちていたので、ひろってあけてみました。
 《水晶のオンドリさん、水晶のメンドリさん、伯爵夫人(はくしゃくふじん)のガチョウさん、尼寺(あまでら)のアヒルさん、小鳥のかわらひわさん、ヒヨコの結婚式にまいりましよう》
 手紙は、結婚式の招待状(しょうたいじょう)でした。
 オンドリは、じぶんがまねかれているので、結婚式にいこうとあるきだしました。
 するとむこうから、やはり水晶のように白くて美しいメンドリがやってきました。
 「もしもし、水晶のオンドリさん。うれしそうにどこへいくんです?」
 と、メンドリが声をかけました。
 「ヒヨコの結婚式に、まねかれていくんだよ」
 と、オンドリが答えました。
 「わたしも、いってはいけません?」
 と、メンドリがききました。
 「招待状に、名まえがのっていればね」
 オンドリは、手紙をあけて読みました。
 「水晶のオンドリさん、水晶のメンドリさん。・・・やっぱり、おまえさんの名まえも書いてある。ではいっしょにいこう」
 こうして二わのニワトリは、なかよく旅をつづけました。
 するとむこうから、長い首をふりながら、きどったあるきかたをしたガチョウがやってきました。
 「おや。オンドリさんにメンドリさん。なかよくうれしそうに、どちらへいらっしゃるの?」
 と、ガチョウが声をかけました。
 「ヒヨコの結婚式に、まねかれていくんです」
 と、オンドリが答えました。
 「わたしも、いってはいけませんの?」
 と、ガチョウがききました。
 「招待状に、名まえがのっていればね」
 オンドリは、また手紙をひらいて読みだしました。
 「水晶のオンドリさん、水晶のメンドリさん、伯爵夫人のガチョウさん。なるほど。あなたのお名まえものっている。ではいっしょにまいりましょう」
 こうして三わの鳥は、いそいそと旅をつづけました。
 するとむこうから、黒い羽をしたアヒルがやってきました。
 まるで、尼さんそっくりのすがたです。
 「おや。ガチョウさんにオンドリさんにメンドリさん。おそろいで、どこへいくんです?」
 と、アヒルがききました。
 「ヒヨコの結婚式に、まねかれていくんです」
 と、オンドリが答えました。
 「わたしも、ごいっしょできませんか?」
 「招待状に、名まえがのっていればね」
 そう答えて、オンドリは、また手紙を読みだしました。
 「水晶のオンドリさん、水晶のメンドリさん、伯爵夫人のガチョウさん、尼寺のアヒルさん。なるほど、書いてある」
 こうして四わの鳥は、あるいていきました。
 するとむこうから、ほおが赤くて、つばさが金色のかわらひわがとんできました。
 「みなさん、どこへいらっしゃるの? アヒルさんに、ガチョウさんに、メンドリさんに、オンドリさん」
 と、かわらひわが声をかけました。
 「ヒヨコの結婚式に、まねかれていくんです」
 と、オンドリが答えました。
 「あら、わたしもいきたいわ。つれていってくれません?」
 と、かわらひわがたのみました。
 「招待状に、名まえがのっていればね」
 オンドリは、また手紙をひらきました。
 「水晶のオンドリさん、水晶のメンドリさん、伯爵夫人のガチョウさん、尼寺のアヒルさん、小鳥のかわらひわさん。ああ、やっぱりあんたもまねかれている」
 こうして五わの鳥は、旅をつづげました。
 するとむこうから、目をギラギラひからせたオオカミがやってきました。
 「おい、おい! みんなでどこへいくんだね!」
 と、オオカミは、ドラ声をはりあげました。
 「ヒヨコの結婚式に、まねかれていくんです」
 「わしも、いってはいかんかね!」
 「はい、はい、まねかれていれば」
 と、オンドリはまた手紙をあけました。
 「オオカミさん。残念ながら、あなたはまねかれておりません」
 「だけど、わしはいきたいよ!」
 鳥たちはオオカミがこわいので、いっしょにいくことにしました。
 しばらくいくと、
 「わしは、はらがへった!」
 と、オオカミがいいだしました。
 「せっかくですが、なにもありません」
 「じゃ、おまえを食ってやる!」
 そうさけぶと、オオカミはオンドリをのみこんでしまいました。
 それから同じことをいっては、メンドリも、ガチョウも、アヒルもたべてしまったので、あとは小鳥のかわらひわだけになりました。
 こうして、しばらくいくと、
 「かわらひわさん。わしは、またはらがへってきたよ!」
 と、オオカミがいいだしました。
 「なにをあげたら、いいのかしら」
 「おまえを食えばいいのさ!」
 オオカミはとびかかりましたが、小鳥はすばやくオオカミの頭の上にとびのりました。
 オオカミがつかまえようとすると、あっちへにげ、こっちへとびするので、オオカミはヘトヘトにつかれてしまいました。
 するとむこうから、頭にかごをのせた女の人がやってきました。
 ムギの刈り入れの人たちに、食事をはこんでいくところです。
 「オオカミさん、オオカミさん。わたしの命をたすけてくれるなら、ほら、むこうからくる女の人の頭の上のカゴの中のマカロニや肉をごちそうしますよ」
 と、かわらひわがさけびました。
 「そんなことが、できるのか?」
 「はい。あの人は、かならずわたしをつかまえようとしますよ。わたしは枝から枝へにげまわります。すると、あの人はきっとカゴを地面において、わたしをおいかけます。そのすきに、あんたはごちそうをみんなたべられますよ」
 ほんとうにそのとおりで、女の人はむちゅうで、かわらひわをおいかけました。
 そのすきに、オオカミはカゴのごちそうをたべてしまいました。
 「きゃーーーぁっ!、オオカミが出たあ! たすけてー!」
 女の人のさけび声をきいて、お百姓(ひゃくしょう)たちがとんできました。
 そして、カマや棒でオオカミをたたき殺してしまいました。
 オオカミのおなかからは、生きたままで、オンドリも、メンドリも、ガチョウも、アヒルも出てきました。
 こうして、かわらひわのおかげで、みんなそろってヒヨコの結婚式にいきました。
 おしまい        
 
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