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12月23日の日本の昔話
アリとあんこ
むかしむかし、権右衛門(ごんえもん)という、町一番の長者(ちょうじゃ)がいました。
何不自由ない権右衛門さんですが、家にはあととりの子どもがいません。
「あととりがいなくては、この家はわしの代で終わりじゃ。養子(ようし)を探さんといかんが、どうせならこの家をもっと大きくしてくれる、頭の良い子どもにしたいの」
そこで権右衛門さんは頭の良い養子をさがしましたが、そう簡単には見つかりませんでした。
そんなある日、となり村のウシ飼いの家で、両親のいない子どもが働いていると聞きました。
しかもその子どもは、村で一番頭が良いと評判(ひょうばん)です。
権右衛門さんはその子どもを屋敷によぶと、さっそくその子どもの頭の良さをためしてみました。
「海には水が何てきあるか、数えておくれ」
そんな事、神さまにだってわかりませんが、子どもはすぐに答えました。
「はい、すぐに数えますから、海に流れ込んでいる川の水を全部せきとめてください」
「ほう、そうきたか」
子どものうまい返し方に感心した権右衛門さんは、次の問題を出しました。
「それならば、初めは四本足で、次に二本足、さいごには三本足になる物はなんじゃ?」
「はい。それは人間です。生まれた時は四本足ではいはいしますが、大きくなったら二本足で立ちます。そして年寄りになったらつえをついて、三本足です」
「ほほう、これは確かに評判通りの子どもじゃ。それでは、これでさいご。ここに、曲がりくねった穴が開いている石がある。この石の穴に、ひもを通しておくれ」
「はい、それではひもと、まんじゅうと、きぬ糸をかしてください」
権右衛門さんが用意すると、子どもはまんじゅうをわって中のあんこを石の穴の出口にぬりつけました。そして地面を歩いているアリをつかまえるときぬ糸を結びつけて、石の穴の入り口に入れたのです。
するとアリは穴の出口にあるあんこに気づいて、穴の出口まで進んでいきました。
こうして石の穴にきぬ糸が通ると、そのきぬ糸の先にひもを結びつけて引っ張ったのです。
するとちゃんと、曲がりくねった石の穴にひもが通りました。
「うむ、見事じゃ!」
権右衛門さんはこの子どもを養子にすると、本当の子ども以上にかわいがったそうです。
おしまい
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