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    福娘童話集 > きょうの日本民話 > 12月の日本民話 > 米問屋のお礼 
      12月27日の日本民話 
          
          
         
  米問屋のお礼 
  宮崎県の民話 → 宮崎県情報 
       むかしむかし、ある海辺に、おじいさんとおばあさんと息子と嫁とが暮らしていました。 
   おじいさんと息子は沖に出て魚をとり、おばあさんと嫁は機(はた)を織(お)る毎日でした。 
   ある日の事、おじいさんと息子が沖へ漁に出ていると、急に空模様(そらもよう)があやしくなってきました。 
  「こりゃ、大雨になるぞ」 
  「お父っつぁん、あの島へ行こう」 
   二人は大いそぎで、近くの島へ逃げました。 
   だんだん雨風が強まるなか、やっと舟をおかに押し上げて、洞穴(ほらあな)にこもり、大荒れに荒れる海を見ながら、二人はジッと夜を明かしました。 
   次の朝、大雨がやんだので、二人は舟を出して魚とりをはじめました。 
   アミを海に入れると、とても重い手ごたえがあります。 
   二人がなんとかアミを引き上げてみると、アミの中には二十五、六歳の立派(りっぱ)な着物を着た男がかかっていたのです。 
  「お父っつぁん、こりゃあ」 
  「うむ、ゆうべの大雨に流されてきたお人じゃろう。かわいそうなことだ。もう死んでいる」  
   二人は島に穴をほると、その男をていねいにうめてやりました。 
  「今日は、ひきあげよう。おばあさんに頼まれていた物を買ってから帰ろう」 
   二人は大きな町がある港へ、舟をこぎ寄せました。 
   おみそやお米を買おうと、お米屋へ行ったら、そこの旦那(だんな)が声をかけてきました。 
  「もし、あなたたちは、昨夜の大雨の時、どうしていましたか?」 
  「はい、わしたちは危ういところで島に逃れられました」 
  「そうでしたか、それはよろしゅうございました。ところでここへ来る途中、千石船(せんごくぶね→江戸時代、米を千石ほど積める大形の和船)を見かけませんでしたか?」 
  「いいや、見なかったですな。ですが今日、わしらのアミに若い男の死骸(しがい)がかかって、島にうめてきました」 
  「死骸ですと!」 
  「なにか、心当りでもありなさるのか?」 
  「実は、息子が大阪に千石船で米を積んで出て行ったのですが、そこへあの大雨。心配しているところです」 
  「そうじゃったか」 
  「ごめんどうをおかけしますが、わたしをその島へ連れて行ってもらえますまいか?」 
   二人は旦那を乗せて、その島へ戻りました。 
   うめた死骸をほり返してみると、旦那の顔から血の気が引きました。 
  「むっ、息子です」 
   二人は死骸を乗せて再び港へ引き返し、立派な葬式(そうしき)にも立ちあいました。 
  「あなたたちには、すっかりお世話になりました。わたしの心からのお礼を港に用意しました。どうか受け取って下さい」 
  「いや、お礼なんぞいりません」 
  「いいえ、あなたたちは息子をていねいにうめて下さっただけでなく、持っていたお金も、そっくりそのままそえて下さっていた。その正直さに感銘(かんめい→感動)しました。どうぞ受け取ってやって下さい」  
   あまりにも旦那が言うので受け取ることにしたのですが、旦那につれられて港へ行ってビックリです。 
   なんと旦那が用意したお礼は千石船で、しかも米千石が積んであったのです。 
   その上、死んだ息子がもっていた百両(ひゃくりょう→七百万円ほど)以上もの金もくれたのです。 
   二人はたちまち大金持ちになり、嫁とおばあさんの待っている家へと帰っていきました。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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