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    福娘童話集 > きょうの日本民話 > 12月の日本民話 > とけてしまった雪ん子 
      12月23日の日本民話 
          
          
         
  とけてしまった雪ん子 
  青森県の民話 → 青森県情報 
       むかしむかし、ある雪国に、おじいさんとおばあさんがいました。 
   二人には子どもがいなかったので、お宮さんにおまいりして、 
  「なんとか、わしらにも子どもをさずけてください」 
  と、お願いしたのです。 
   すると、二人の夢の中に神さまが現れて言いました。 
  「そなたたちの願いを聞き入れよう。女の子をさずけるから、雪で人形をつくるがよい」 
   次の朝、おじいさんとおばあさんは大喜びで庭へ出ると、さっそく雪で人形をつくりました。 
   頭はおかっぱ(→前髪を切り下げ、後髪をえり元で切りそろえた、少女向きの髪型)で、目がクリクリと大きな、とてもかわいい人形です。 
  「よし、かわいい人形が出来た。こんな娘が、本当にいてくれたらなあ」 
  「そうですね。雪人形でなく、本当の娘だったら」 
   二人が雪人形をながめていると、人形がスーッと消えて、そのかわりに雪人形そっくりの、かわいい女の子が現れたのです。 
   女の子は二人を見て、ニッコリとわらいました。 
  「おおっ、本当の女の子だ。神さまが願いをかなえてくれたんじゃ」 
  「ありがたい、ありがたい」 
   おじいさんとおばあさんは女の子をだきかかえるようにして、家につれていきました。 
   見れば見るほどかわいく、それに心のやさしい女の子で、おじいさんとおばあさんを、 
  「お父さん、お母さん」 
  と、よんでくれるのです。 
   二人はこの女の子に雪ん子という名前をつけて、それはそれは大切に育てました。 
   ところがどういうわけか、女の子はあたたかいのが大嫌いで、おじいさんやおばあさんがいろり(→地方の民家などで、床ゆかを四角に切り抜いてつくった暖房のためのもの)にあたれと言っても、 
  「おら、寒いところがええ。暑いところはいやじゃ」 
  と、言うのです。 
   それにごはんもみそしるも、冷たくなってからでないと食べません。 
   それでも、雪ん子はかぜ一つひかないので、二人は、 
  「ほんに雪ん子は、名前のように元気な子じゃのう」 
  と、言って、あきれるやら感心するやら。 
   ところがある時、近所の子どもたちが一緒に遊ぼうと、雪ん子をさそいにきました。 
   雪ん子は、遊びに行くのを嫌がりましたが、 
  「雪ん子や、家にばかりいないで、たまにはみんなと遊んでおいで」 
  と、おばあさんに言われて、しかたなく出かけました。 
   さて、近所の子どもたちは、雪ん子をたき火のそばへつれていきました。 
   あたたかいのが大嫌いな雪ん子を、みんなでからかってやろうというのです。 
  「雪ん子、火にあたれ」 
  「そうだ。もっと火のそばへ行け」 
   子どもたちは嫌がる雪ん子をつかんで、たき火のそばへおしつけました。 
  「いや! あついのはいや!」 
    嫌がる雪ん子の体から、氷のように冷たい汗が流れました。 
  そのとたん、ジューッという音がして、雪ん子は消えてしまいました。 
  「あっ、雪ん子がいなくなった」 
   子どもたちはビックリして、たき火を見つめましたが、小さくなったたき火の上に、白い湯気(ゆげ)がけむりのように立ちのぼっているだけです。 
   かわいそうに、雪から生まれた雪ん子は、火にとけてしまったのです。 
      おしまい 
                 
         
        
        
       
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