|
|
第 2話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
ウサギの穴での一人言
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「葉月優蘭」 葉月優蘭
アリスが野原を走っていくと、運良く白ウサギに追いつきました。
ウサギは生けがきの下にある、大きなウサギの穴にピョンと飛び込みました。
「ああっ。ウサギさん、待ってー!」
アリスもそのまま、ウサギの穴に飛び込みました。
どうやってその穴から出て来られるかなんて、アリスはまったく考えていません。
ウサギの穴は深い井戸のようで、アリスはどんどん落ちていきました。
もう、止まろうにも止まりません。
でも大丈夫、アリスの青いスカートがパラシュートのように開いて、ゆっくりゆっくり落ちて行くのだから。
「こんなにゆっくり落ちるのなら、2階から飛び降りても大丈夫ね。
それにしても、どこまで続くのかしら?
ウサギのお家がこんなに深いなんて、知らなかったわ。
わたしの家が、こんな家じゃなくてよかった」
アリスがこんな事を考えていると、やがて穴の中が明るくなってきました。
周りを見ると、かべには戸だなや本だなが、びっしりはめ込んであります。
本だなの本は難しい本ばかりですが、その中にお姉さんが読んでいた歴史の本もありました。
「お姉さんも、このウサギのお家に来たのかな?」
アリスは下へ落ちながら、途中の戸だなからビンを一つ取りました。
そのビンには《オレンジ・マーマレード》と、レッテルがはってありました。
「わあ、オレンジマーマレードだ」
オレンジマーマレードは、アリスの大好物です。
でもビンは空っぽだったので、アリスはがっかりです。
アリスはそのまま下へ下へ下ヘと、どこまで落ちて行きました。
一体、どこまで落ちて行くのでしょうか?
「もう、何キロぐらい落ちたかしら?
こんなに長く落ちたのだから、きっと地球の中心あたりまで来てるにちがいないわ。
えーと、地球の中心だから、6400キロぐらい落ちたかしら」
地球の中心までの距離は、アリスが学校で習ったばかりです。
アリスは自分の物知りぶりを得意そうにひろうしましたが、今は誰も聞いていないので張り合いがありません。
でも何度もおさらいをするのは、いい勉強になります。
「今が地球の中心だとすると、緯度(いど)と経度(けいど)はどのくらいかしら?」
本当の事を言うと、アリスは緯度や経度の意味をよく知りません。
何となくえらそうな言葉だったので、言っただけです。
アリスのおしゃべりは、まだ続きます。
「このまま落ちていったら、そのうち地球を突き抜けてしまうんじゃないかしら?
地球のうら側にいる人たちなら、きっと逆立ちをして歩いているから、わたしも逆立ちの練習をしなくっちゃ」
アリスの知識も、この程度です。
周りに聞いている人がいなくて、よかったですね。
「そうだわ。今夜はあたしがいなくて、ダイナがさびしがるかも」
ダイナというのは、アリスが可愛がっているネコのことです。
「ダイナも、あたしと一緒に落ちていたらいいのに。
ああでも、空中ではネズミがいないかもしれないわね。
だけど空中なら、コウモリがいるかも。
コウモリとネズミによくにているけど、ネコはコウモリを食べるかしら?」
長い時間落ちていたので、アリスはそろそろ眠くなってきました。
そして夢でも見ているような気持ちで、おしゃべりを続けました。
「ネコは、コウモリを食べるのかしら?
ネズミとコウモリはにているから、きっとコウモリはネコを食べるわね。
・・・あれ?
あたし今、ネコとコウモリをまちがえたかしら?
それにしても、なんだかとってもねむたいわ」
アリスは目をつぶると、夢の中に現れたダイナにたずねました。
「ねえ、ダイナ。あなた、コウモリを食べたことがあるの?」
その時、いきなり、
ドスン!
と、アリスはかれ葉の山の上にぶつかりました。
ようやく落ちるのが、終わったのです。
おわり
続きは第3話、「ドリンク ミー 《drink me》」
|
|
|