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第 13話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
♪バラの花を、赤くぬろうよ
再び森の中へ入ったアリスは、一本の木にドアがついていて、中へ入れるようになっているのに気がつきました。
「木が入口だなんて、ずいぶんと変わっているわね。
でも今日は本当に変わった事ばかりだから、気にしてはだめね。
さあ、入ってみましょう」
アリスは木についているドアを開けて、中へ入りました。
するとそこはアリスが散歩をしたいと思っていた、あのすてきなお庭ではありませんか。
「まあ、ようやくここに来られたわ。美しい花ぞのに、すずしいふん水。とってもすてきだわ」
アリスが花ぞのをながめながらふんの水で手を冷やしていると、どこからか男の人の歌声が聞こえてきます。
♪バラの花を、赤くぬろうよ
♪急いで、ペンキで、うまくぬろうよ
♪バラの花を、赤くぬろうよ
「何の歌だろう?」
気になったアリスは、歌声の方へ行ってみました。
するとトランプ姿の三人が、赤いペンキで白いバラを赤くぬっていたのです。
そのトランプ姿の三人は、クラブのエースとクラブの2とクラブの3でした。
一本のバラの木の花をぬりおえた三人は、別の木のバラをぬりはじめました。
♪バラの花を、赤くぬろうよ
♪急いで、ペンキで、うまくぬろうよ
♪バラの花を、赤くぬろうよ
たのしい歌だったので、ついアリスも歌いながらたずねました。
♪どうして、ぬるのよ
♪白いバラを
それを聞いた三人は、バラをぬる手を止めてアリスの方を見ました。
アリスは三人に、もう一度たずねました。
「あの、せっかくきれいな白いバラが咲いているのに、どうして赤くぬるのですか?」
三人はお互いの顔を見合わせると、クラブの3が答えました。
「どうしてかって? それは、わしらは間違って白いバラを植えてしまったからさ」
「白いバラだと、どうしていけないの?」
アリスの言葉に、三人は歌でこたえました。
♪女王さまは、赤がお好き
♪白バラ、植えたら
♪殺されちゃう
「まあ、それは大変」
「そうだろう」
♪だから、こうして
♪赤くぬるのさ
そう言って、三人はまたバラをぬりはじめました。
「じゃあ、あたしも手伝ってあげる」
アリスは赤いペンキとハケを持つと、三人と一緒に歌いながら白いバラを赤くぬりはじめました。
♪バラの花を、赤くぬろうよ
♪急いで、ペンキで、うまくぬろうよ
♪バラの花を、赤くぬろうよ
その時、庭中にラッパの音が鳴り響きました。
それを聞いた三人は、飛び上がってびっくりしました。
クラブの3が、叫びます。
「大変だ! 女王が来るぞ! 急いでペンキを隠すんだ!」
ペンキを隠した三人は、たちまち地面にはいつくばりました。
「女王さま? まあ、見てみたいわ」
背伸びをするアリスに、クラブの3が言います。
「だめだよ。ぼくたちと同じように頭を下げないと、大変なことになるよ」
アリスは仕方なく、三人と同じように地面にはいつくばりました。
おわり
続きは第14話、「ハートの女王」
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