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第 17話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
裁判
アリスが裁判所に連れてこられた時には、ハートの王さまと女王は、もう玉座についていました。
まわりにはトランプのカードが全員と、動物や小鳥たちがあつまっています。
王さまのそばには、あの白ウサギがいました。
白ウサギは片手にトランペット、もう一方の手に巻き物を持っています。
法廷(ほうてい)のまん中に、テーブルがありました。
その上に小さなパイをたくさん入れた、大きなお皿がおいてありました。
とてもおいしそうなので、アリスは急にお腹が空いてきました。
「裁判なんか早くすませて、あのパイをみんなに配ってくれたらいいのに」
アリスはひまつぶしに、あたりをながめました。
アリスは裁判所に行ったことは一度もありませんが、本で読んだことはありました。
おかげで、たいていのものの名前が分かりました。
「大きなかつらをつけているから、あれが裁判長なんだわ」
その裁判長は、王さまでした。
かつらの上にかんむりをのせているので、ちっとも楽そうではありません。
それに少しも、かつらが似合っていません。
「それから、あれが陪審員席だわ。そしてあの十二の動物たちが、陪審員なんだわ」
陪審員と言う難しい言葉がすぐに出たので、アリスはこの陪審員という言葉を得意そうに何度も繰り返しました。
たぶんアリスと同じ年の女の子で、この言葉の意味を知っているのはほとんどいないと思ったからです。
白ウサギが台に上ると、大きな声で、
「しずかに」
と、言いました。
別に誰も騒いでいませんが、こういう時の決り文句です。
王さまが、白ウサギに言いました。
「それでは伝令、告訴状を読みあげよ」
白ウサギはトランペットを3回吹き鳴らすと、巻き物をといて次のように読み上げました。
「女王陛下、陪審員諸君、国民諸君、ここにいる娘はハートの女王陛下をゲームに誘い、インチキ勝負で女王を困らせ、女王を侮辱し、女王を怒らせた」
それを聞いたアリスは、白ウサギに言いました。
「そんなのうそよ! クロッケーに誘ったのは女王さまだし、インチキ勝負をしたのも女王さまだわ!」
「おだまり!」
女王はアリスの言葉をさえぎると、ニヤリと笑ってアリスに言いました。
「それでは、判決を聞かせてやろう」
「判決? 評決が先よ!」
「判決が先! 評決なんか、後でいいんだよ!」
「うそよ。そんな裁判なんてないわ」
「だまりなさい! ここでは何もかも、女王であるわたし次第なんだよ!」
女王はそう言うと、アリスをにらみ付けて言いました。
「判決! 娘の首をはねておしまい!」
すると王さまが、恐る恐る言いました。
「あの、証人を一人か二人呼んではどうかな?」
「では、早くお呼び!」
おわり
続きは第18話、「証人」
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