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第 15話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
クロッケー遊び
兵士たちが帰ってくると、女王は兵士に聞きました。
「あの者どもの、首は切ったかい?」
首を切っていないと言うと今度は自分たちの首が切られるので、三人の兵士は女王にうそを言いました。
「はい。もうあいつらには、首はございません」
「よろしい。ところでお前、クロッケー遊びが出来るか?」
クロッケー遊びとは、フランスで始まりイギリスで発展した木づちでボールを打つ遊びです。
兵士たちはだまって、アリスの顔を見ました。
女王は、アリスに聞いたからです。
「はい。やったことはありませんが、ルールは知っています」
「それなら、ついておいで」
言われたアリスは、女王の行列にくわわって歩きました。
広場につくと、女王がカミナリみたいな声で怒鳴りました。
「みんな、位置につけ!」
するとトランプたちがかけ出して、ぶつかりあいながら四方八方にちっていきました。
そしてみんな位置につくと、ゲームがはじまりました。
「こんなおかしなクロッケー、始めて見たわ」
アリスは女王に聞こえないように、小さな声で言いました。
何しろ広場は平らではなくでこぼこで、ボールは生きたハリネズミ、そしてボールを打つ木づちは生きたベニヅルだったのです。
女王が最初に、ボールのハリネズミを打ちました。
女王はクロッケーが下手で、ハリネズミのボールはとんでもない方向へ転がっていきましたが、ゲートの代りをしているトランプたちが急いで動いて、ハリネズミのボールを自分たちの体で作ったゲートに通しました。
「ほれ見なさい。わたしの腕前を」
ゲートがボールに合わせて動くなんて完全にインチキですが、女王は満足そうです。
「では次、お前の番だよ」
「はい。女王さま」
アリスはベニヅルを小わきに抱えると、ハリネズミのボールを打とうとしました。
するとベニヅルがくにゃりと体を曲げたので、アリスは空振りです。
それをみて、女王もトランプたちも大笑い。
「もう、ベニヅルさん。ちょっとの間、じっとしていてよ」
アリスはベニヅルの首を真っ直ぐに伸ばすと、その頭でハリネズミを打とうとしました。
すると今度はハリネズミが丸めた体を伸ばして、とことこと走っていったのです。
おかげでアリスは、またしても空振りです。
「ああん、もう。ベニヅルさんもハリネズミさんも、じっとしていてよ」
アリスはベニヅルとハリネズミに注意をすると、三度目の正直でハリネズミのボールを打つことが出来ました。
ハリネズミのボールはまっすぐ転がって、トランプたちのゲートをくぐろうとします。
「やったわ!」
でもゲートをくぐる寸前にトランプたちが立ち上がって、別の場所に移動してしまいました。
「あらあら、お前はクロッケー遊びが下手だね。いいかい、わたしが手本を見せるから、よく見ているんだよ」
女王はそう言って、大きな空振りをしました。
でもハリネズミは自分から転がっていき、トランプたちのゲートをくぐります。
これではアリスが、勝てるはずはありません。
おわり
続きは第16話、「娘の首をはねておしまい!」
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