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第 3話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
ドリンク ミー 《drink me》
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投稿者 「葉月優蘭」 葉月優蘭
かれ葉の上に落ちたアリスは、少しもけがをしなかったのですぐに立ち上がりました。
アリスの目の前に、また長い穴が続いています。
ふと見ると、あの白ウサギが穴の先をどんどん急いで行くのが見えました。
さあ、ぐずぐずしているひまはありません。
「ウサギさん、待ってー!」
アリスはあわてて、ウサギの後を追いかけました。
ウサギはベストから、時計を取り出しました。
「わあ、大変だ! こんなに遅くなってしまったぞ!」
ウサギがかどを曲がったので、アリスも続いてかどを曲がりました。
ところがウサギの姿は、もうどこにも見えません。
アリスはいつの間にか、天井の低い広間にいました。
天井からはランプがぶら下がっていて、広間を明るくてらしています。
広間の四方のかべには、古い木のドアがあります。
「このドアの、どれかに入ったのかしら?」
アリスはドアに手を伸ばしましたが、どのドアもカギがかかっていて開きません。
「どこかに、カギはないかしら?」
アリスが周りを見ると、ふいに三本足の小さなテーブルが現れました。
そのテーブルは全部がガラスで出来ていて、上には小さな小さな金のカギが一本のっています。
「このカギで、ドアのどれかが開くのかもしれないわね」
アリスはすぐに、ためしてみました。
「うーん、だめ。・・・こっちもだめ。・・・こっちもだめだし、これもだめだわ」
どのドアのカギも、大きすぎたり小さすぎたりして合いません。
ところがもう一度部屋を見渡すと、低いカーテンが見つかりました。
「あら、こんなカーテンなんてあったかしら?」
アリスがカーテンをまくると、高さ四十センチほどの小さなドアがあります。
「もしかして、これかな?」
アリスが小さな金のカギを、その小さなドアに差し込んでみると、
カチャリ!
「わあ、うれしい」
カギはぴったり合って、小さなドアが開きました。
するとその向こうに、小さなろうかがあります。
アリスが四つんばいになってろうかをのぞきこむと、その先にお庭が見えます。
「すてきなお庭」
アリスはその美しい花ぞのやふん水のあるお庭を、散歩してみたくてたまりません。
ところがその小さなドアは、アリスの頭さえ入りません。
「たとえ頭が入っても、体が通らないから無理だわ。
お父さんが持っている望遠鏡みたいに、体を折りたためるといいんだけどなあ」
アリスは仕方なく、さっきのテーブルのところに戻りました。
すると今度は、テーブルの上に小さなビンが一つのっていました。
「あれ? さっきは、ビンなんてなかったけど」
ビンには、小さな札がむすびつけてありました。
「なにか書いてあるわ。えーと《drink me》。『わたしをお飲みなさい』か。うまいこと書いてあるわね」
アリスは思い切って、そのビンの中の液体をちょっとだけなめてみました。
「わあ、すごくおいしいわ。
まるでサクランボ入りのパイと、プリンとパイナップルと、七面鳥の丸焼きと、ミルクキャンデーと、バターをぬったトーストパンの味を混ぜ合わせたみたい」
なかなか想像しにくい味ですが、気に入ったアリスはビンの中身をぐっと飲み干しました。
すると不思議なことに、アリスの体がみるみるちぢんで、25センチほどになってしまったのです。
「これであの小さなドアを通って、美しいお庭に入れるわ」
アリスはにっこりほほえむと、すぐに小さなドアへ行きました。
おわり
続きは第4話、「イート ミー 《eat me》」
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