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第 6話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
ネズミはネコが大きらい
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投稿者 「葉月優蘭」 葉月優蘭
「何だろう? あの大きさだと、カバかしら?」
アリスが泳いで近づくと、それはただのネズミでした。
小さくなっていたので、ネズミをカバとかんちがいしたのです。
(あのネズミ、お話ができるかしら?)
ウサギが人間の言葉をしゃべったのだから、ネズミだってしゃべれるかもしれません。
アリスはネズミに、声をかけました。
「ねえ、ネズミさん。あなた、この池の出口を知らない?」
「・・・・・・」
ネズミはアリスを見てけげんな顔をしましたが、何も言いません。
「そうか。きっと英語がわからないんだわ。
ひょっとしたら、ウィリアム征服王と一緒にイギリスにやって来たフランスのネズミかもしれないわ」
そこでアリスは、学校で習ったばかりのフランス語で話しかけました。
「わたしのネコは、どこにいますか?」
今の言葉は、フランス語の教科書に出ていた文章です。
それを聞いたネズミは、急に怖そうな顔になってブルブルと震えました。
「あっ、ごめんなさい。あなたたちネズミは、ネコが大きらいだったわね。うっかりしてたわ」
するとネズミが、大声で文句を言いました。
「決まっているじゃないか!
きみがぼくだったら、ネコが大好きだと言うと思うか!
ネコはぼくたちを、食べるんだよ!」
「いいえ、大好きだとは、たぶん言えないわ」
アリスはネズミに、なだめるように言いました。
「もう、怒らないでね。
・・・でも、家のネコのダイナを見せてあげたいわ。
ダイナはとってもかわいくて、とってもおとなしいのよ。
暖炉のそばにお行儀よく座って、手をなめたり、顔をあらったり。
それにダイナを抱くと、ふわふわして気持ちがいいの。
それからダイナは、ネズミをとるのがとっても上手なの。
あっ! ごめんなさい」
アリスは謝りましたが、ネズミは体中の毛を逆立てて怒っています。
「あらやだ、もうあたしたち、ダイナのお話しはやめましょうね」
「あたしたちだって?」
ネズミは、尻尾の先までブルブル震わせて叫びました。
「それではまるで、ぼくがネコの話をしたがってるみたいじゃないか!
ネズミは、むかしからネコが大きらいなんだよ!
もう二度と、ネコの話は聞きたくないよ!」
「ごめんなさい。
本当に、ごめんなさい。
もうネコの話はしないから、だから怒らないで」
アリスが必死で謝ると、きげんをなおしたネズミは池の向こうを尻尾で指さして言いました。
「岸はあっちさ。
この方向にまっすぐ行けば、池から出られるよ。
じゃあダイナに、ネズミをいじめないように言っておくれよ」
ネズミはそのまま、反対方向に泳いでいきました。
おわり
続きは第7話、「白ウサギの家」
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