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第 4話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
イート ミー 《eat me》
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投稿者 「葉月優蘭」 葉月優蘭
小さなドアへ向かったアリスですが、ドアのところまで行った時、あの小さな金のカギを忘れてきたのに気がつきました。
そこでカギを取りにテーブルへ戻ったのですが、小さくなったアリスではテーブルの上に手が届きません。
ガラスのテーブルなのでカギは下からでもよく見えるのですが、ガラスのテーブルはつるつるすべって、よじ登ろうとしてもだめでした。
「だめだわ。どうしても登れない」
アリスは悲しくなりましたが、ここで泣くようなアリスではありません。
「今は泣いていても、何の役にも立たないわ。
それより、どこかに何かないかしら?
・・・あら?」
アリスはテーブルの下に、小さなガラスの箱があるのに気がつきました。
「さっきまでなかったのに。・・・まあ、いいか」
開けてみると、中には小さなクッキーが入っていました。
小さなクッキーには小さな小さな干しぶどうで、《eat me》と書いてあります。
「《eat me》。『わたしをお食べなさい』か。
食べると、どうなるのかしら?
今度は、大きくなるのかしら?
それとも、もっと小さくなるのかしら?
・・・まあいいわ。
食べて大きくなれば、テーブルのカギに手が届くし。
もっと小さくなれば、あのドアの下からもぐり込めるわ」
干しぶどうはちょっと苦手ですが、アリスはがまんしてクッキーを食べました。
すると今度は、アリスの体がどんどん大きくなっていったのです。
もとの身長を通りこして、アリスはまだまだ大きくなります。
「あれあれ?
今度は世界一大きな望遠鏡みたいに、あたしが伸びていくわ。
足も、どんどん離れていく。
あたしの足さん、さようなら」
アリスが自分の足にさよならを言った時、ようやく大きくなるのが止まりました。
「よかった。足にはもう会えないかと思った」
アリスはテーブルの上の金のカギを取ると、急いでドアのところへ行きました。
でも今のアリスは、3メートルをこえる大女です。
体が大きすぎてドアを通りぬけるどころか、横に寝ころんで片目でお庭をのぞくのがやっとです。
アリスは座り込むと、また悲しくなって涙を一粒こぼしました。
おわり
続きは第5話、「涙の池」
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