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第 19話
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イラスト 「愛ちん(夢宮愛)」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
アリスのはんげき
ぐんぐん大きくなったアリスを見て、王さまも女王さまも白ウサギもびっくりです。
何しろアリスの体は、ここにいる人たちの何十倍も大きいのですから。
王さまは法律が書かれてあるノートを広げると、アリスに言いました。
「第四十二条、背の高さ、1キロ以上の者は、すべて法廷を出ること」
「あたしは、1キロなんかありません」
文句を言うアリスに、王さまが言いました。
「いや、ある。1.5キロはあるぞ」
女王も、そばから言いました。
「2キロはある」
「とにかく、あたしは出ていきません
。
それに1キロ以上は法廷を出るなんて、それは本当の規則ではありません。
王さまがたったいま、かってにつくりだしたものです」
「いや、これはこの国の一番古い規則じゃ」
「あら、一番古いなら、第一条でなければおかしいわ」
王さまは、あわててノートを閉じました。
「とにかく陪審員、有罪か無罪か決めろ」
「死刑よ。娘の首をはねておしまい!」
今言ったのは、女王です。
すっかり大きくなったアリスは、王さまと女王をつまみ上げて言いました。
「なによ。
有罪だの、首をはねておしまいだの。
あんたたちなんて、ちっとも怖くないわ。
いくらいばっても、あんたたちなんか、たかがトランプじゃないの」
「ええい、なまいきな。兵士たち、今すぐ娘の首をはねておしまい!」
女王の言葉にトランプの兵士たちがおそってきましたが、今のアリスには怖くありません。
アリスは飛びかかってくるトランプの兵士を、手で簡単にはねのけました。
その時、アリスの目の前にあの笑った口が現れました。
チェシャネコです。
顔だけ姿を現したチェシャネコは、アリスに言いました。
「アリス、そろそろ目を覚ました方がいいよ。お姉さんが困っているからね」
「えっ? お姉さんが?」
おわり
続きは最終話、「現実の世界へ」
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