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第 10話
イラスト 「夢宮 愛」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
ヘビになったアリス?
アリスはしばらく、二つのキノコをながめていました。
「どっちが、どっちなのかしら?」
いくら考えても、どっちが大きくなるキノコで、どっちが小さくなるキノコか分かりません。
そこでアリスは二つのキノコを片手づつに取ると、とりあえず右手の方をちょっぴりかじってみました。
するとたちまち、アリスは高いところから飛び降りたような気持ちになりました。
アリスの小さな体が、ものすごい勢いで小さくなっていくのです。
アリスが食べたのは、小さくなるキノコだったのです。
さあ、ぐずぐずしているひまはありません。
このまま小さくなれば、アリスは消えてしまいます。
アリスはあわてて、左手のキノコをかじりました。
すると見ている景色がどんどん下へ流れて、気がつくと目の前には青空が広がっていました。
アリスの体は、森の木よりも大きくなったのです。
「まあ、何てよく効くキノコでしょう」
アリスがびっくりしていると、何かがアリスの耳元でさわぎました。
見てみるとそれはハトで、ハトはアリスの頭の周りを飛ぶと、アリスの頭や耳をくちばしで突きながら言いました。
「ヘビよ! ヘビだわ!」
「違うわ。あたしは、ヘビじゃないわよ」
「ヘビに決まっている!
どうせあんたも、あたしのタマゴを食べるんだろう!
せっかく森の中で一番高い木を選んで巣を作ったのに、その木よりも大きなヘビが現れるなんて!」
ハトはそう言って、またアリスの頭を突きました。
「いたい! あたしはヘビじゃないわ! 本当よ!」
「なら、タマゴを食べた事は、一度もないんだね」
「それは・・・」
アリスは今日の朝ご飯に、タマゴ焼きを食べたことを思い出しました。
「それは、タマゴは今日も食べたけど」
「ほらやっぱり! あんたはヘビよ! ヘビだー! ヘビよー!」
ハトは再び、アリスの頭を突きます。
「もう、やめてよ!」
アリスは仕方なく、右手の小さくなるキノコを食べることにしました。
でも食べ過ぎて小さくなりすぎても困るので、なめるように少しずつ食べることにしました。
おわり
続きは第11話、「チェシャネコ」
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