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12月23日の日本の昔話
キツネのちょうちん
むかしむかし、あるところに、なまけ者の兄さんと働き者の弟がいました。
ある日の事、弟は山へ仕事に行きましたが仕事に夢中になり、気がつくと、あたりは真っ暗でした。
「困ったなあ」
弟が、真っ暗な夜の山道で立ち往生していると、ぼんやりと光るちょうちんを持ったキツネが、木のかげから出て来たのです。
「どうしました?」
キツネが聞くので、弟は暗くて帰り道がわからないと答えました。
「それはお困りでしょう。どうぞ、このちょうちんを持ってお行きなさい」
キツネはそう言うと、弟にちょうちんを渡しました。
「ありがとう。助かります」
弟は、お礼を言って、ちょうちんのあかりをたよりに山道を帰ることが出来ました。
さて、家に帰って、ちょうちんの中のろうそくを消そうとすると、
チャリーン、チャリーン。
と、ちょうちんの中から何枚もの小判がこぼれ落ちました。
何と、このちょうちんの明かりは、この小判が光っていたものだったのです。
「あのギツネは、神さまだったのかもしれない」
弟は山に向かって、何度も何度も手を合わせました。
さて、この話を知った、なまけ者の兄さんは、
「よし、おれもキツネに小判をもらおう」
と、自分も山へ出かけて行きました。
そして夜になり、ちょうちんを持ったキツネが姿を見せると、さっそく言いました。
「道に迷ったから、ちょうちんをくれ」
「そうですか。それではどうぞ、このちょうちんを」
キツネがちょうちんを差し出すと、それを受け取った兄さんは、もう一方の手も出して、
「ちょうちん一つでは暗すぎる。もう一つくれ」
と、言いました。
「・・・・・・」
キツネは無言で、兄さんに、ちょうちんをもう一つ差し出しました。
(よし、これでおれは大金持ちだ)
兄さんは大喜びで、二つのちょうちんを持って山をかけ下り、家に帰りつきました。
そして、すぐにちょうちんの中をのぞき込んでみると、何とちょうちんの底が抜けていて、小判は一枚も残っていなかったのです。
「しまった! 小判を山道に落としてきたにちがいない」
兄さんは慌てて家を飛び出すと、山道をかけ登って行きました。
そして、
「あっ!」
兄さんは、驚いて立ち止まりました。
何と道の両側に、明かりを灯したような黄色い花が、ポツポツポツと、どこまでも続いて咲いているのです。
「しまった! 小判が全部、花になっちまったんだ」
兄さんはがっかりして、家に帰っていきました。
この花は月見草という花で、今でも月見草の事を『キツネのちょうちん』と呼んでいる所があるそうです。
おしまい
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