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8月16日の日本の昔話
二人の幽霊
むかしむかし、ある町に、色白で気の弱い『新べえ』という侍がいました。
弓も刀もだめで、仲間からは腰抜けよばわりされていました。
さてこの町に、元は町一番の長者屋敷だったのですが、今は荒れ果てて幽霊が出るとのうわさの屋敷がありました。
ある日、仲間の侍たちから、
「どんなに強い侍でも、一晩とおれんというぞ。お主なんか、門をくぐることさえも出来まい。あはははははっ」
と、ばかにされた新べえは、
「そこまで言われては、なにがなんでも泊まってやるわ!」
と、家に帰って腹ごしらえをすると、おっかなびっくり幽霊屋敷へ出かけていきました。
草がぼうぼうの庭に入っていくと、さっそく人だまが西と東から一つずつ、すすーっと飛んできました。
「うひゃーっ、人だまが、二つも!」
新べえは逃げ出したいのをがまんして、恐る恐る屋敷に入りました。
やがて、ろうそくの火がひとゆれしたかとおもうと、
「うらめしやあ・・・」
と、髪の長い女の幽霊が、銀のお金の入った箱を抱いて現れました。
「で、出たー!」
新べえが震えあがりながらも何とかこらえていると、カギを手にした男の幽霊も現れました。
男女の幽霊が一緒に出てくるなんて、よほどのわけがあるのでしょう。
新べえが思い切って、わけを聞いてみると、
「わたしたち二人は、この屋敷で働いていた者同士です。結婚の約束をしたのですが、主人がそれを許してくれません」
と、男の幽霊が、かたりはじめました。
「そこで屋敷のお金を持ち出して、よその町へ逃げて暮らそうとしたのですが、主人に見つかってしまい二人とも斬り殺されてしまいました。そして別々のところにうめられ、今もそのままなのです。わたしたちはそのうらみから屋敷の主人にたたってやりましたが、今だに成仏出来ません。どうかこのお金でお坊さんをよんで、成仏させてください」
「そうだったのか。わかった」
新べえが引き受けると、男女の幽霊は人だまになって、すーっと出ていきました。
座敷には銀のお金がずっしり入った箱と、その箱のカギが残されています。
あくる朝、新べえは幽霊屋敷の出来事を寺の和尚さんに伝えて、二人の供養してもらいました。
この話しを聞いた、この国の殿さまは、
「腰抜けどころか、新べえの働きは侍のかがみであるぞ。ほめてとらす」
と、ほうびとして、その屋敷を与えたそうです。
おしまい
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